コレがオレのデジタルワールド!!

ステージ14:新たな力の発現!!


メタルティラノモンが食事を終えた時、この部屋が飢えたライオンの檻の中の様な感覚になった。

餌が欲しくて仕方がない、今直ぐ喰いたい。

アナログマンの手下であろう人物がその願いを叶える。手持ちのリモコンのスイッチを押すと餌が振ってくる仕組みだ。

その手下も同じ檻の中だが、メタルティラノモンが手下を殺すと餌が出て来なくなると思っているのか、最初から襲わない様にプログラムされているのか、全くメタルティラノモンは手下を敵視している感じは無かった。

まず上を見る事無く一番近い位置のメタルマメモンXの着地地点付近に寄り、メタルマメモンXの着地と同時に上から叩き潰した。小さい体がさらに小さくなったメタルマメモンXの死骸はそのままひょいっとメタルティラノモンの口の中に入る。

「もう止めるんだ!!メタルティラノモン!!」

叫んだのはメタルガルルモンだ。彼は直ぐにメタルマメモンXをロックオン、ミサイルを放ち次々とメタルマメモンXを撃破して行く。当然餌が横取りされたと思うメタルティラノモンはメタルガルルモンが邪魔な存在になる。するとメタルティラノモンはメタルガルルモンに飛びかかっていた。

「くそっ、こうするしか無いのか!!」

今度はメタルガルルモンも動いた、そのまま自分の2倍以上あるメタルティラノモンにタックル、一瞬の競り合いで両者は弾け飛んだ。

「止めても無駄ですよ、まだまだたくさんありますからね。」

確かにメタルマメモンXの数は多かった。メタルガルルモン1体だけじゃ手に負えない、だったら。

「全力で止めるのみ!!」

いつの間にかメタルマメモンXの取り合いが始まっていた。オレとウォーグレイモンがメタルティラノモンに近いメタルマメモンXを撃破する。その周りをタクトとメタルガルルモンが撃破する。メタルティラノモンが手を出せない訳じゃなかったが野放しには出来なかった。

この時誰もメタルティラノモンを攻撃しなかったのは、まだ希望を信じていたからだろうか。

「ぐあぁあっ!!」

「っ、ウォーグレイモン!!」

ウォーグレイモンがメタルマメモンXに注意を取られ過ぎていたのか、メタルティラノモンの腕がウォーグレイモンを叩きつけていた。

「大丈夫っ、がぁ!」

そしてオレは不覚にも他人の心配をしたおかげでメタルマメモンXに殴られた。

タクトやメタルガルルモンも大量に出現したメタルマメモンXを相手にしていて手が離せない状況になっていた。その危機から脱出させてくれたのはメタルティラノモンの食欲だった。

「ふふふふふ…ふはははははははっ!!」

メタルマメモンXが部屋から消ると手下の笑い声が部屋に響いた。気が狂ったか?声の方を向くとそんな事は無く、しかもちゃんと立ち上がっていた。

「準備は整った。」

冷静を保とうとしているのか、顔が引きつったり体が震えたりしている。その様子を誰もが見ていた。

何の準備なのか。それを考えている中、手下の言ったある言葉が浮かんで来た。『大きくなれ』。もしかして!!

それに一番早く気づいたのはタクトだった。

「クォ・ヴァディス!!」

「進化中に攻撃!?」

「もう遅い!!」

投げられたグングニルがメタルティラノモンに当たるよりも先に、メタルティラノモンは光に包まれた。

「メタルティラノモンが…進化する!!」

光の中から現れたデジモンは、体をレッドデジゾイドで構成し、ムゲンドラモンに負けない程のキャノン砲を2本背中に背負ったデジモン。

「カオスドラモン!!」

だが大量にXデータを摂取したメタルティラノモンは体がXデータで埋め尽くされたのだろうか、青枠から赤枠に進化している。現れたデジモンはカオスドラモンXだった。

「嘘…ゼヴォリューション!?」

「戦力的には…大丈夫だと思うんですけど、普通のカオスドラモンXじゃ無いでしょうね。」

ウォーグレイモンが言う。先のダメージがまだ残っている様で、少しふらついている。それでも戦力を冷静に分析する。だけどまだ結果を出すには解らない部分が多かった。

それから直ぐにカオスドラモンXは戦闘態勢に入った。クォ・ヴァディスのダメージはある筈なんだがそんな物は一切感じさせなかった。

「ふふふ…どうです?コレが、人間の科学の力です!!デジタルなんて少し弄れば簡単に扱えるんですよ。量産されたメタルティラノモンXも、他のデジモンも同じです。世界を構成する0と1の配列をメタルティラノモンの配列に並び替え、Xデータを組み込む。簡単に作れましたよ。まぁ、多少Xデータの製作に時間がかかりましたが。」

誰も話しを聞いて無かった。襲いかかって来るカオスドラモンXとの交戦で気を抜く事が出来ない。もちろんオレもだ。

オレはこの戦闘でムゲンドラモンとの戦いを活かせると思っていた。でも実際は全然活かせない。大体カオスドラモンXが高速で移動したり中を浮いたり逆さまの状態でハイパームゲンキャノンを撃って来たりするなんて思わないだろ?

それを可能にしたのはXデータだった。急いで逃げ回っている途中、雑音並みに聞こえたのだがどうやらXデータは飛行や潜水能力を付加したり、基本能力を上げたりと、様々なパターンがある様だ。

「反則だろ!!こんなのが飛ぶなんてよ!!」

無理矢理付加された能力はカオスドラモンXの格好をした別のデジモンに進化させいた。進化と呼べるのかは解らないが。

とにかく連れて帰る事をオレは考えていた。こんな事を考えているのはオレだけかもしれないけど2つ案が浮かんだ。

まずはメタルガルルモンのコキュートスブレスの氷付け。そうすればパワーで振り切られない限りカオスドラモンXは動けない。それを皆で運び出してボレロに連れて帰る。それからどうするかはボレロで考えればいい。オファニモンになら強力な麻酔は容易いだろう。

もう1つは徹底的にぼこぼこにして活動停止状態に持ち込む。かなり手荒だが今の状態では一番やりやすい作戦かもしれない。と言うより今遂行中か。

「グレイクロスフリーザー!!」

メタルガルルモンの全身の砲門が開き、一斉にミサイルを放つ。メタルガルルモンの放ったミサイルは3〜4発を一組として飛んで行く。カオスドラモンXはミサイル迎撃能力を持たず回避行動に出る。

コレはメタルガルルモンの作戦通りだった。カオスドラモンXの右側から飛んで来るミサイルは数、角度から左に避けるのが一番効果的な回避行動、それを更に右から追い込みどんどん左に移動させる。最後に遠回りさせた右側からのミサイルでカオスドラモンXの動きを止める。急に来たミサイルにカオスドラモンXは急ブレーキをかけて反対側へステップを踏もうとする。そのブレーキの時間はメタルガルルモンには十分だった。

「コキュートスブレス!!」

メタルガルルモンの口から放たれた冷気のビームは対象を一瞬で氷付けにし身動きを封じた。多分部屋の気温が2〜3度下がった。

「うぉぉぉぉ!!ドラモンキラー!!」

さらにウォーグレイモンが追い討ちをかける。相手の動きを封じ、強力な一撃を叩き込む。メタルガルルモンとのコンビネーションアタックだ。

ドラモンキラーはカオスドラモンXの動きを封じている氷を構わず砕き、カオスドラモンXの頭に刺さった。カオスドラモンXが唸る声が聞こえたがそれも時期に止んだ。もしかして死んだのか?

「っ!?ウォーグレイモン!!早く離れて!!」

急にタクトが叫んだ。ウォーグレイモンは何が起きたのか解らないままカオスドラモンXからドラモンキラーを引き抜いた。その時ウォーグレイモンは油断していた事は無かったと思う。ただ予想していない事態に驚きはしただろう。引き抜かれた傷口からワイヤーが伸びてウォーグレイモンの右腕に絡みついた。まるでヴェノムヴァンデモンの様だった。

「グガァアアアアア!!」

ばりばりと氷を破る音を立てながらカオスドラモンXが再び動き出した。やばい。そう感じたオレは右腕を構えてポジトロンレーザーを撃つ体勢に入る。つまりこうだ。

「ポジトロンレーザー!!」

バシューン、バチィ!!

「ウォーグレイモン!!」

直ぐに駆け寄りキャッチ。そして見詰め合うウォーグレイモンとオレ。

「アスカ…。」

「ウォーグレイモン、大丈夫か?」

「アスカ、ありがとうございます。」

どうだ?このシナリオを1秒もかからない内に作り上げ実行に移す。冗談は置いといてやばい気がする。

「ポジトロンレーザー!!」

ポジトロンレーザーを撃ちワイヤーを焼き切る。カオスドラモンXは捕まえた獲物を逃がすまいと手を伸ばしウォーグレイモンを捕まえようとするがそこはタクトのブルトガングが阻止、グングニルで薙ぎ払いカオスドラモンXの巨体が仰け反った。

カオスドラモンXは傾いた体を元に戻す事無くそのまま後ろに宙返りしながらハイパームゲンキャノンを発射する。標準がでたらめだったのか弾は全く関係のない方向へ飛んで行き爆発した。こんな攻撃をするには何か意味がないだろうか?浮かんだのは『あの時の攻撃はこのためか。』何て展開。着弾地点は施設内の端っこの方。端に重要な柱があるとかそんな事も無かった、考えすぎだったのだろうか。とりあえずオレはウォーグレイモンを受け止めると言う大仕事をしなければならないのだ。

「アスカ来ないで!!」

「っ!!??」

ウォーグレイモンがオレを制止する。考えてみれば確かにオレの腕じゃウォーグレイモンを受け止められそうに無い。ウォーグレイモンだって空を飛べる。自力で着地するだろう。

「ぐ…うぅ…。」

着地するなりウォーグレイモンは右腕を押さえながらその場に倒れた。コレは変だ。いくらウォーグレイモンが来るなと言ってもオレは直ぐに駆け寄った。

「ググッググッググッ…。」

奇妙な笑いを上げながらカオスドラモンXがこっちを見ている。

「ウォーグレイモンに何をしやがったぁ!!」

抑えていた腕の部分は変色し始めている、ウォーグレからBウォーグレって感じだ。

「ウォーグレイモン!!ウォーグレイモン!!」

「アスカ…慌て過ぎです…。」

ウォーグレイモンはよろめきながらも立ち上がる。

「アスカ、コレはXデータです…。」

「何だってっ!?」

「ですが恐らく大丈夫です…カオスドラモンXと繋がっている間か、デジコアに達した場合以外は活動しない様です。」

「そんな事解る訳無いだろ!!」

「直感ですよ。右腕の感覚がありませんが…大丈夫です。いざとなれば切り落とす事位。」

「絶対ダメだ!!」

戦闘が引き金になって休眠状態のXデータが活動を始めてしまったら?実はこのデータは感染から発症まで潜伏期間があるとか?

激しい不安と怒りが込み上げて来る。どうすれば良いのか解らない。どうなってしまうのか解らない。オレは何をすれば良いんだ?

「アスカ君、後ろ!!」

「邪魔をするなぁぁあ!!」

振り返ると同時に右腕を伸ばし思いっきり手を広げる。バチィと音を立てて2つの光弾はオレの右手に止められる。激しい回転をしながら『突き破ろうとする』光弾をオレは右手に意識を集中させると光弾は破裂した。更にそこにポジトロンレーザー以上にエネルギーを収束、飛び散ったエネルギーでさえ吸収、再構築する。

やがて巨大なエネルギーの弾が完成した。今にも爆発しそうなエネルギーを安定形に持ち込み暴走を止める。安定したエネルギーを今度は凝縮させる、でかけりゃ良いって事は無い。

コレまでの事をほんの数秒で終わらせ、瞬時にカオスドラモンXに向ける。後は発射だけだ。

「メガデスッ!!」

ギュンと空気を切り裂きながら物凄い勢いで飛んで行くメガデスはカオスドラモンXに何の支障も無く当たると大爆発を起こし、カオスドラモンXを炎で包んだ。

「うわっぷ…。」

爆風と煙、そして衝撃波。ココでオレは初めてメガデスを撃った事に気づいた。

「コレが…メガデスか!!すげぇ!!」

ただ右手は痺れて、熱い。オメガブレードを握る事すら危うかった。

「ぐっ…結構きついな。」

その様子を見たタクトが言った。

「アスカ君、ウォーグレイモンを連れて先に帰るんだ!!」

「なっ、何言ってんだよ!!」

「ボク達は大丈夫だからさ、ウォーグレイモンの事もある、急いだ方が良い。」

その時炎の中からカオスドラモンXが姿を現した。

「グウゥゥウゥゥゥウ。」

右腕でガードしたのだろうか、右腕は肩から下が消え、肩も落ちかけている。左腕もひびが入り、そこから何かが漏れている。Xデータで修復している様に見えるが失った部分は再生出来ない様だ。

「アスカ君!!速く!!」

「アスカ様、自分達は大丈夫です、アレだけのダメージを与えてます。後は任せて下さい。」

「でもっ!!」

「アスカ。」

迷うオレをウォーグレイモンが止めた。そして普段と変わらない声で言った。

「戦えない私達が残っていても足手まといなだけです。ココは退きましょう。退くのも勇気です。誰もアスカをバカにしません。」

「ゴメン…そうだよな…邪魔になるよな。」

畜生!!

ウォーグレイモンの手を引きながら階段を登った所の扉へ向かう。扉は来た時と同様簡単に開いた。

「状況は確認してます。脱出経路はこちらです。」

突然現れたのはコマンドラモン。今回の作戦でとても役に立っているデジモンだ。ただオレが会ったコマンドラモンとはしゃべり方が違う。何と言うか、しっかりしてて頼もしい。

「えっとぉ…ゴメン、番号は?」

「コマンド02です。部屋が危なげだったので、避難させてもらっていました。」

タクトと一緒にいた奴だな。

脱出経路を確保していると言っただけに全く敵との遭遇は無かった。だがウォーグレイモンと走る廊下はとても長く感じた。実際遠回りしているかもしれないが、走っている距離と時間の感覚は多分狂ってる。帰ると決めたんだ、だったら速く帰りたい。

「あぁあぁあぁあぁ!!せっかくの実験体が、ぼろぼろじゃないですか!!」

「…まだいたんだ。」

「レーダーにはばっちり映ってましたが…。」

動きがぎこちなくなって来たカオスドラモンXとノートパソコンのデータを見ながら手下が叫ぶ。残った2人は存在感の薄さに驚きながらもカオスドラモンXからは決して目を離さない。ちなみにタクトはカオスドラモンXと手下の両方を視界に入る場所に移動した。

「まぁ良いでしょう、どの道捨てるつもりだったので…新しい興味も湧きましたし。」

「残念だけど、アスカ君達の所へは行かせないよ。」

「このカオスドラモンXが生んだXデータが、他のデジモンにどのような影響を及ぼすのか。是非とも観察したいですねぇ。」

もうカオスドラモンXには全く興味を示さない。お払い箱な訳だ。

「私も、先を急グ、の…デ…si…つれ…い。」

いきなりだった、かなりいきなりだった。手下がパソコンのキーをポンと叩くと手下の体はじっくりと分解され、やがて空気と同化して消えてしまった。メタルガルルモンのレーダーからは消失、タクトの視界もカオスドラモンXしかいない。

『それから、キミ達にはまだ実験を手伝ってもらうよ。』

放送だろうか、どこからかスピーカーから聞こえる様な声だ。まだこの中にいるのだろうか。

「単独で転送出来るのか…人間は。」

「もしくは最初からココにはいなかったってパターンかな…。殴った時は感覚あったんだけどな。」

後者だと願いたい。施設内には最初からCLOSEが来る事を知っていたかの様に人間は全くいなかった。一人だけ残っているのも不自然だった。となると次に怪しくなって来るのはこの部屋の入り口の、やたら警備の薄かった扉。それから浮かんで来るのはカオスドラモンXをどうやって捨てるのか、だ。

ちなみに手下の放送は完璧に無視されていた。

『実験には1人で良い、メタルガルルモンには席を外してもらおうか。』

聞こえた放送、今度は無視できる様な話じゃなかった。

「うっそ…冗談きついよ。」

地面から壁が現れた。返事をする間も無くタクトとメタルガルルモンの間に壁が現れた。メタルガルルモンが直ぐにミサイルを壁に撃ち込むがタクトには振動すら感じられない。完璧に隔離されたのだ。

更にメタルガルルモン側では異変が起きていた、扉のある対面が迫って来ていた。ミサイルを撃ち込んでも止まりそうに無い壁。壁に取り付けられた階段も簡単にそぎ落としながら進んで来る。

「止むを得ないか…タクト、必ず助けに来ます。」

仕方なくメタルガルルモンは部屋から駆け出した。扉が完全に閉まったのはそれから直ぐだった。

「邪魔をするなぁ!!なんちゃってぇ…。」

1人残されたタクトがちょっぴり冗談をこめて言った台詞は、今のカオスドラモンXにとって初めて聞く台詞だった。




続け!!







〜あとがき〜
お久しぶりです、こんな展開でどうやって続けるのか悩んでいるかもしれないD輔です
久々に投稿するのは少しためらいを感じましたね
んまぁ現在あとがきを考えながらも投稿を押すのかどうか解りません
多分あとがきを書いていて何だか乗ってきた気がするんで投稿すると思います
読者さんがコレを見ていたら投稿されたのでしょうね
あ、元気が無い

アスカ「オレの出番少なくねぇ?」

気のせいです
活躍してるじゃないですか、多分

前回にかかわらず感想を書いてくれている方、読んでくれている方に
とても感謝してます、ありがとうございます

何だかあとがきの勉強もしなければならない気がしてきましたね
感謝のコメントもまともに書けないのか…
とりあえず10話以上も続いているのは感想を投稿してくださっている方のおかげです、ありがとうございます

以上を持ちまして、あとがきを終了します