コレがオレのデジタルワールド!!
ステージ13:発見!!メタルティラノモンとアナログマン!?
タクトが援軍のコマンドラモンと合流したのは、3度目のメタルマメモンX達の攻撃を受けて突破した後だった。
「コマンドラモンです、コードネームはコマンド02、セラフィモン様から援軍要請があったので来ました。」
「セラフィモン様が?そんな話は聞いていないぞ。」
セラフィモンが援軍をよこした事に疑問を持つメタルがルルモン、しかしコマンドラモンは確かにセラフィモンからこの拠点へと命令を受けたと言い張る。タクトも最初からセラフィモンも言ってくれてたら良かったのにとは思った。
「まぁ、別に良いんじゃない?ボクはタクト、コードネームはクリムゾン、よろしく。」
コードネームをタクトが言ったのにはメタルガルルモンは驚いた。作戦会議中全くそんな話は無かった。それにあの即答だ、前から考えていたに違いない。
「ボク達はこの看板の指す方向に進んでるんだけど。」
タクトが壁についている看板を指す。そこには色々な部屋の名前とその方向が書かれていた。
タクトが指したのはデジモンラボと書かれていた。ちなみに一番大きな文字は英語だ。
「我々は援護に集中せよとの事です、ついて行きます。」
考え込むタクト、メタルガルルモンも同様に考えている様だ。
「ついて来るのは勝手だけど、危ないと思ったら直ぐに逃げてね。」
この先どんなデジモンがいるか解らない。作戦の内容はメタルティラノモンの救出だが、コマンドラモンの様な成長期のデジモンが戦っても大丈夫なのか、流石に心配になる。
「大丈夫、心配無用です。」
コマンドラモン、コマンド02は得意げに手持ちのアサルトライフルを構えた。
それから何度かメタルマメモンXの小隊と激突したが、コマンド02の戦闘は見事だった。
強力なステルス機能を駆使したヒット&アウェイなのだが、敵にはコマンド02の姿が見えてない。敵はコマンド02を探すだけで精一杯になり、やがてコマンド02の仕掛けた爆弾が敵を倒していた。タクトやメタルガルルモンの出番は全く無かった。タクトに至ってはD−LINKを解除しているほどだ。
あのバックパック、一体どれだけの爆薬が詰め込まれているのか。恐らく爆薬だけじゃないだろう。タクトは聞いてみたがコマンド02は教えてくれなかった。恥ずかしいらしい。
「ねぇメタルガルルモン…。」
コマンド02がせっせと爆弾を仕掛ける様子を見ながらタクトは言った。
「コマンドラモンも、可愛いね。」
ウォーグレイモンの苦労が解った気がしたメタルガルルモンだった。それと同時に自分は可愛いの部類なのか、かっこいいの部類なのか物凄く気になった。流石にそれは聞けなかったが。
「かなり体力が温存出来てる、コレもコマンド02のおかげだね。」
デジモンラボの扉の前でタクトが言った。コマンド02は照れながら手元のスイッチを押しメタルマメモンXを何体かまとめて吹っ飛ばす。周りに敵がいなくなった事を確認すると扉を開く作業に取りかかった。
扉を開くにはカードキーが必要だった。コマンド02はバックパックからノートパソコンを取り出し、さらにカードキーに合うサイズのカードを取り出した。それは半分がカードでもう半分がパソコンに繋げる様にコードがついていた。コマンド02は擬似カードを差し込むと、慣れた手つきでキーボードを叩き始めた。
「スパイごっこみたいだね。」
タクトは感想を漏らした。
「すいません、ちょっと待って下さいね…。」
ずっ、とディスプレイを覗き込むコマンド02、どうやらてこずっている様だ。
メタルガルルモンはこの状況で敵が来ないかハラハラしてたがタクトはきらきらした眼差しをコマンド02に向けていた。
コレでどうだとエンターをバシッと叩くと数秒後、カードキー差込口の隣にあるランプが緑色に光り、ピーと音がして扉が開いた。
「ふぅ…すいません、てこずりました。」
「いや、凄いよコマンド02。ボクなら絶対壁壊してたもん。」
部屋は暗かった、電気が点いていないのだ。3人が部屋に入ると扉は自動的に閉まった。閉じ込められたとか、奥で何かが待っている、そんな展開があるかもとかタクトは思ったがそうではなかった。ただ自動的に閉まっただけで、扉には【開ける時には押して下さい】とスイッチがあった、電気もスイッチを押せば点いた。
「タクト、こういう場合は電気を点けない方が良いと思います、自分の居場所を教える様な物ですし…。」
「え、そうなの?」
やがて全ての電気が点いた。部屋の真ん中に柱が立っていて、周りを囲むようにパソコンが並んでいる。出入り口の壁を除く3つの壁には大きなディスプレイが設置されている。今は何も映ってないので普段はどんな物が映っているのか解らなかった。所々設置されている小さな2〜3人で囲う円形のテーブルも置いてあった。そこにも1台ずつノートパソコンが置いてあった。
「ココが…研究室?やっぱり誰もいないね。」
「タクト、奥に扉が。」
辺りを見回すタクトにメタルガルルモンが言った。メタルガルルモンの指す方向、部屋の右側の壁の一番奥、そこに人間サイズの鉄製の扉があった。そこにはハザードマークと危険という言葉をたくさんの国の言葉で書かれていた。
「デジ文字…は無いみたいだね。」
「中を見ます、2人は下がって下さい。」
コマンド02が扉に近づき、ステルスモードにして姿を消す。コレでもし扉の向こうに敵がいたら扉が勝手に開いた様に見えるだけ、便利な機能だ。扉が全て開くとコマンド02が姿を現した、特に問題はないらしい。
ハザードマークやたくさんの国の文字を使ってまで危険を表しているのに研究所の入り口より
も簡単に開いてしまう。誰もが罠だと思っただろう。
扉の向こうは下りの階段だった。右側は壁、左側には手すり、そして広い空間が広がっていた。何かの倉庫。そうタクトには思えた。
「コマンド02は階段を下りた所でステルスモードで待機。他のコマンドラモンには入らない様に連絡といて。それから、危ないと持ったら直ぐに逃げてね。」
「了解しました。」
階段を降る前に全体を見回して見る。
「メタルティラノモン?」
この部屋の真ん中にメタルティラノモンが立っていた。特に外傷も無く、無事の様だった。
「ようこそ、CLOSEの皆さん。」
どこからか声が聞こえる。探してみるが見つからない、やがて声の主はメタルティラノモンの後ろから現れた。
「初めまして。あぁ、メタルガルルモンは久しぶりなのかな?」
声の主は白衣に見を包んでいたが、長髪にオールバック、アナログマンのイメージとは遠かった。
「そんな事はどうでも良い、メタルティラノモンを返してもらおう。」
がちゃっと音を立ててメタルガルルモンの背中のミサイル発射口が開く、中から赤いミサイルが覗いている。
「おぉ、怖い怖い。でもまだあげませんよ、もう直ぐ捨てる予定でしたがね。」
「何ぃ?」
メタルガルルモンは階段を飛び降りる。タクトとコマンド02は急いで階段を降りた。
「もうボロボロなんですよ、色々実験に使わせてらもいました。補強するのにXデータを使いましたから、最後の実験なんですよ。まぁ…。」
男が一息置いて楽しそうに言った。
「Xイレイザーなんて使ったら、メタルティラノモンの体はスカスカでしょうねぇ。」
「キサマァアア!!」
「止めろっ、メタルガルルモン!!」
タクトの制止を無視してメタルガルルモンの背中からミサイルが放たれた。そのミサイルは小さな放物線を描き、男に目がけて進み、爆発した。
爆発で起きた煙が消えると、目の前には男ではなく、傷だらけのメタルティラノモンが立っていた。
「危ない危ない。」
半分笑いを含む声、男がメタルティラノモンの後ろから頭だけを出して言った。
「壁が無かったら死んでたかもしれませんねぇ。」
「そんな…。」
メタルティラノモンは天井に向って口を大きく開けてふらふら立っている状態、今にも倒れてしまいそうだった。事故であっても仲間を傷付けてしまったメタルガルルモン、その動揺は隠せる物じゃなかった。
「可愛そうに、仲間に傷つけられるなんてねぇ…仕返しがしたい?あぁ、そうすればいい。」
「!!??」
ふらふら立っているメタルティラノモンが急に両手をメタルガルルモンに向けて、大きな口を開いた。
「ギガデストロイヤーU、1番2番、ヌークリアレーザー発射。」
メタルティラノモンからかすかに聞えた雑な電子音は、メタルガルルモンには激しい怒りに聞こえた。その様子を見たタクトは気づいた。
「避けろぉぉっ!!!」
メタルガルルモンの様子を見てタクトが叫んだ。すぐさま駆け出しメタルガルルモンの前に出ようとする。
「(間に合わない!!)」
瞬時に対抗策を考える。しかしどの結果も間に合わなかったり、全ての攻撃は防げなかったり、インビジブルを呼び出してなかった事の後悔ばかり。諦めかけた。いや、タクトが諦めた時だ。
「ポジトロンレーザー!!」
突如メタルガルルモンの上から3つの閃光が走る。2つはメタルガルルモンの直前でギガデストロイヤーUを撃ち落とし、残りはヌークリアレーザーを弾いた。タクトが上を見上げると聖剣オメガブレードと白い翼を持ったアスカが空を飛んでいた。
「大丈夫ですか?」
ウォーグレイモンが上から飛び降りてメタルガルルモンとメタルティラノモンの間に立つ。アスカとウォーグレイモンの出現。これだけの戦力が揃えばメタルティラノモン1体くらい簡単に取り押さえる事が出来るだろう。
「間に合ったみたいだな、タクト。」
「美味し過ぎるよ。」
呆気に取られたタクトはD−LINKを発動する事さえ忘れていた。
「任せとけっての。」
それからオレは地面に降りてメタルティラノモンの方向を見る。上からだったのかはっきりと見えた白衣のおっさん。オレは確信していた、ソイツはアナログマンの『手下』だと。
「そこにいるのは解ってるんだ、出て来い!!」
オレが言うとアナログマンの手下はメタルティラノモンの後ろから現れた。やっぱりアナログマン何て感じには見えない。そりゃぁデジワーに出てるアナログマンと同じ顔ばっかりってのも嫌だけど。
「キミは確か、メタルガルルモンXを撃退してしまった子だね。」
「…だったらどうすんだよ。」
「お礼を言いたいんですよ。」
何言ってんだコイツは。
「チームがやたら究極体にこだわりましてねぇ。生産するのに時間がかかるから反対したんですが、逆に反対されちゃいまして。チームが有していた唯一の究極体を倒してくれて良かったのですよ。おかげで今は完全体で落ち着いてくれてましてね、ずいぶんとコストもダウン出来ました。」
「デジモンを何だと思ってるんだよ!!」
「道具ですよ、ど、う、ぐ。所詮はデジタルなんですよ、人間に使われる側。あなた達子供みたいにパートナーだとかほざいてる暇なんて無いんですよ。」
何て奴だ、最悪な考えじゃないか。オメガブレードを握る手に力が入り、怒りが湧き上がって来る。
「D−LINK:インビジブル」
ほらタクトだって怒っ…!?
すぐ横にいたタクトは手下、いや、メタルティラノモンに飛びかかっていた。そのまま前蹴りでメタルティラノモンを吹っ飛ばす。コレには手下も驚いている。
「な、何だ、仲間を助けに…。」
「だって、もう助からないんでしょ?」
それからタクトは上から思いっきりグーで手下の頭を殴り、頭を抱え込んだ所に回し蹴りを食らわした。嫌な音と共に手下が4〜5メートル飛ぶ。ブルトガングやグングニルを使わなかった所は良かった。ただオレも殴ってやろうと思ったがそこまでする気は無かった。ましてやメタルティラノモンを蹴り飛ばすなんて。
「タクトさん、メタルティラノモンが助からないとは、どう言う事ですか?」
会話の内容を冷静に聞いていたウォーグレイモンがタクトに聞く、そう言えば蹴り飛ばす前にそんな事言ってたかも。
タクトは下を向き黙ってしまう。
「教えて上げましょうか?」
何とか生きていた手下が天上を見ながら言う。かなりダメージがあったのか、起き上がらない。オレを含めて皆が黙る。タクトが言えない様な事、深刻な内容なのは想像出来た。
「こういう事なんですよ。」
男がポケットから何かのリモコンを取り出す。ポチッと押すとメタルティラノモンの丁度目の前の床が開き、メタルティラノモンXが1体せり上がって来た。直ぐにオレと目が合った、思わずオメガブレードを構える。ソレがメタルティラノモンの目に入った瞬間だ。
「グガアァアア!!」
メタルティラノモンの中で何かが起きた。ぼろぼろで今にも倒れそうだったメタルティラノモンは目の色を変えてメタルティラノモンXに飛びかかったのだ。
「何だよ…コレ。」
オレに敵対意識を燃やしていたかもしれないメタルティラノモンXは、自分の背後から飛びかかって来たメタルティラノモンに喰われていた。後ろから頭と尻尾の付け根を押さえられ、背中からバリバリと喰われている。その強力な顎はクロンデジゾイドの存在を無視するかの様に、簡単に喰っている。この光景はロードとは程遠かった。
「ソイツの体はXデータで埋め尽くされてるのさ。だから消費した分取り込まなければいけない、だからXデジモンを喰うんだよ。最初は消費量が少なかったが最近はどんどん喰いやがる。まるで薬物中毒みたいだろ?」
言葉が出なかった。
食事を終えたメタルティラノモンは受けたダメージが見る見る回復していた。取り込んだXデータで修復したのだろうか?辺りを見回し、餌が無い事を確認してメタルティラノモンは座り込んだ。
「アスカ、私もタクトに賛成します。少しでもメタルティラノモンとして、デジモンとしての部分が残っているうちに…。」
「デリートするって言うのかよ!!」
ウォーグレイモンやタクトが言いたい事は解る。でもコレが最善の方法なのか?どうしても助けられないのか?オファニモンなら治せるんじゃないのか?
「ほぉら…たくさん喰って『大きくなれ』よぉ。」
響く男の言葉、またリモコンのスイッチを押していた。すると今度は上からメタルマメモンXがたくさん降って来た。
それからまたメタルティラノモンの狩りが始まった。
続け!!