私は生きている。この世界に生きている。それだけは、確かだ。
しかし、私は安定した存在ではない。
姿はひとつだ。だが、私の中には二つの意識がせめぎあっている。
外見は、さしずめ騎士に見えないこともないかもしれない。
だが、私の体の構成データはめちゃくちゃでぼろぼろなのだ。
そんな私でも、生きている。この世界で、生きている。
ロイヤルナイツという集団には、私に似た存在がいるらしい。
いや、とても似ているといったほうがいいであろう――獣と竜の力を持つものとして――
だけれど、あのものと違うところがひとつ、ある。
望まれた力、望まれた調和……。
私、いや、私たちはそうではない、だから、私という存在は、認められないのだろう。
私は生きている。この世界に、確かに生きている。
だけれど、私はもう長く生きられないであろう。
ほら、その証拠にあのものがきた。
ネットワークの守護者として、この世界を守るものたちの一人。
私に似た姿をしている。だけれどわかっているんだ、あのものは、私を消すために来たのだ。
「貴様を排除しなければいけない……これはデジタルワールドの決断だ。速やかに消えてもらう。」
あのものが右手を上げると、そこに力が集中されていき、光があたりにあふれる。
そして、そのエネルギーを、私にめがけて放つ。
私は右手に収まった剣を抜き、あのものの攻撃を受け流した。
強力な力で、私は数m後ろに下がってしまったが、耐えしのぐことができた。
私が消されてしまうべき存在だとはわかっている。だけど、生きたい。例えこの世界から認められなくても。
あのものも、私と同じように左手の剣を抜いた。その剣には、私の行く末を案じているような言葉、ALL DELETE、そう書いてある。
あのものは、私に向かって力いっぱい剣を振り下ろす。
私はそれを横っ飛びでかわし、後方へ下がり、剣を構える。
あのものは追撃として、今度は突きの体勢で突っ込んでくる。
私は、左腕の砲を構え、照準を合わせる。
私の左腕から、すさまじい勢いで私の漆黒の組織が流れ出し、あのものを包み込む。
あのものは、うごめきながら、私の細胞を懸命にはがそうとしている。
次の瞬間、あのものの体が大きく光った。閃光と爆風、粒子化される漆黒の組織。
あのものの体は傷だらけだった。自爆覚悟で、細胞を焼き尽くしたのだ。
膝をがくりと突いた。私はこの瞬間を逃さない。
空中へ飛び上がり、左腕をあのものに向けて構え、第二弾を放った。
あのものも右腕を振り上げ、莫大なエネルギーを放つ。
黒い細胞と、白い光がはじけあう。力はほぼ互角だった。
生きたい、私はまだ消されたくない……
私は、ありったけの力をこめる。
「うぉぉおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
あのものも雄たけびを上げ、出力を上げる。力比べが続く中、私の体に異変が起こった。
パリパリ、と私の体を電流が通り抜けるような感触があったと思うと、私は体が思うように動かせなくなった。そんな、私が、不完全なバグだから……?
私の左腕から、細胞はもう、打ち出されない。私は、白い光に包まれた……
私は生きたい、私は……まだ、生きたい。

ロイヤルナイツの一人であるオメガモンは、デジタルワールドに発生した突然変異のバグ、自分とよく似た存在を、この世界から抹消した。