彼はデジモンが大好きな人間だ。彼は学生で、授業が終わるとデジモンを取り出し、育成する。そしてあるとき。
「デジモンに詳しいんだって?」
話しかけてきた生徒がいた。
「ずっとやっているから少しは詳しいつもりだよ。」
「ふーん」と言い、「じゃぁ訊くけどさ」一呼吸おいた後、
「デジモンミニver1で、メタルグレイモンに進化できるのは?」
「えっと、ヌメモンとグレイモン」
「じゃぁ、完全体以降に進化する条件で、勝率に関わるものの別称は?」
「えぇーっと……」答えにつまる。「わからない?」と生徒が訊き、彼は頷く。
「マスターコンディション。覚えていない?」
「あぁ、そういえば。」
彼はVジャンプに載っている内容を思い出す。
「じゃぁ、僕はそろそろ。」
生徒は去っていった。彼は呆然としていたが、やがて悔しさが強くなる。僕はデジモンが好きなのに、あの問題を答えられないなんて……
その日から、彼はデジモンの資料を読み漁った。家では勉強もするので時間が足りず、学校での休み時間を使い、あらゆる資料を熟読した。
そして彼が、デジモンについて敵う者がいない程、知識を身に着けたある日。休み時間、以前質問してきた生徒を見つけた。
「久しぶり。君の質問に答えられないのが悔しくてね、だいぶ調べ直したよ。また何か質問してみてくれよ。」
「ふーん。ところで、僕の相棒デジモンは今、メタルマメモンなんだ。君は……?」
彼は、はっとした。僕はどれだけ、自分のパートナーと過ごさずにいただろう。
「……改めて質問させてもらうよ。君にとって、デジモンとテイマーって何?」
そして彼は、テイマーに必要なのは、知識でもグッズでもなく、デジモンへの無償の愛だということを悟った。