太古の昔、原始の植物達が海中を支配した。
植物達は光合成により莫大な量の酸素を放出した。
そして酸素は大気中で密集、空中で変化した。
それがオゾンである。オゾンは我々を紫外線から守る重要な役目となっている。
植物は、我々の食料となり、そして我々の必要なものを作り上げたといっても過言ではない。
石炭なども、元は古代の植物だ。
植物は人間達と一緒にともに生きるため、果実をつけ、人間に種を運んでもらう方針をとったものもいる。

デジタルワールドにも、植物が存在する。
森はデジタルワールドでもデジモン達が食料のため、住む場所のために利用する。
そして、今その植物の食料のおかげで、生きていられる子供達がいた。

「・・・で・・・?これからどうする?」

哺乳類方デジモンの横に座っている少年が言う。

「やっぱり行動あるのみ!なーベアモン。」
「ああっ!」

ベアモンに少年が話し掛け、ベアモンが返事をする。

「だけど・・・やっぱり危険だわ。さっきのヤンマモンみたいなデジモンがいたら・・・」

少女が不安そうに言う。

「そうなだ。このエリアなら、進化も出来るだろうし、食料にも恐らく当分は困らん。」

自信に満ちた声で少年が話した。

条、知己、博紀、真希の4人は、ヤンマモンを倒したらそこのエリアだけ戻った。そこで、まず、ここにとどまるか、それとも少し探ってみるかを検討していた。

「わたしは博紀に賛成。」
「う〜む・・・やっぱり安全第一。がしかし・・・」
「デビドラモン・・・それか?引っかかっているのは・・・」
「ああ・・・・」
「あのヤンマモンが言ってたやつか?確か領地を与えられたとか言ってたよな。」
「つまり、やつがここを率いているってことだ。」
「とりあえず、いったんここで様子を見ましょうよ。」
「そうだぜ・・・やっぱりここは慎重にだ。あせる必要はねえぜ。」

ヤンマモンが領地を分けられたといったことから、この森全体に一定のエリアごと守護者が必ずいるらしい。
とすると、このエリアが戻ったのに疑問を抱いて他のエリアから敵が進出するに違いない。
そのため、ヤンマモンを倒してすぐデジモン達は木の実などを食べた。
いつでも戦闘できるようにしておかなければいけない。

「そういえば、デビドラモンのことなんだが・・・」

博紀が言い出す。

「俺の記憶が正しいならばデビドラモンは敵を石にする能力があった。それに必殺技の威力も半端じゃねえ(双葉社 「デジモン大図鑑」より)。しかも、この森全体の全デジモンが襲撃してきたらどうする?」
「だが・・・いまはエリアの領主デジモンしかいないみたいだな。今俺達がいるこのエリアが元に戻ってもデジモンはいなかった。元々いないのか、それとも全体を戻さないと駄目なのか・・・詳しくは分からないな。」
「デビドラモンが元々ここの支配者とはわたしは思えない。だとすると、何か理由があるとおもう。そしてここを支配されたから、他のデジモンが出て行ったんじゃないかしら。」

考えは色々だ。
しかし、考えているポイントはみな同じである。

「とりあえず、この世界の歴史についてもう少し知りたいな・・・」
「そういえば博紀、おめー、確かこの前の朝抜け出してたとき、遺跡かなんか見たんだろ。なんかなかったのか?」
「あぁ、レリーフがあった。デジモン同士の戦争のな。」
「レリーフ?しかも戦争のか・・・」
「この世界・・・なんかありそうだな・・・」
「そうね・・・私達が今ここにいるのも、きっと・・・」
「なーるほどねぇー・・・」
「そういえば博紀〜、あれって機械のデジモンと魔法使うデジモンだったよな・・・?」
「ん?種族同士の戦いなのか?」
「ああ、少なくともハグルモンの話でもそうだし、レリーフにも刻んであった。なあ?」
「そうそう。そういえばあれどこで聞いたんだろ・・・」
「そういう話なら俺も聞いたことあるぜ!」
「俺もだ!」
「私も・・・噂程度なら・・・」
「ふむ・・・みんな知っているのか・・・」
「色々な種族ごとに分かれたりしてた・・・っていうことか?」
「ん?ちょ、もうちょっとわかりやすく話してくんねーかな?」
「知己・・・理解力悪すぎ・・・」

森、世界の歴史、噂・・・
子供達はこの世界について知らないことが多い。
だが後々知っていくことになるであろう・・・
この世界のことを・・・

しばらく時間がたつ。
結局、あーだこーだ考え、安全を第一に考えることになった。

そして、その様子を赤い目で睨む様に凝視している影が、一つ。

「ん?」

博紀が何かに感づいたようにあたりを見渡す。

「どうしたの?博紀。」
「いや・・・なんでもねえ・・・(四つに輝く赤い目・・・まさか・・・)・・・」

そこからかなりはなれた場所。
かなり離れているといっても森の中。
いや、もはや地面の中に等しいのであろうか?
大木の根が、闇の雰囲気を引き立てるようにところどころに見える。

「ご報告します。どうやらやつら、まずは安全策をとるようです。どのようにいたしましょう?」

忠実そうな言葉づかいと裏腹、凶暴そうな声。

「フム・・・ヤツラはマダ戦闘に自信がないんダナ。よろしい。好きにしろ。」

骨が浮き出たような外見を持ち、手に怪しげに光る石がはまったステッキをもつデジモンがそう言うと、

「わかりました」

と、そう一言いい、凶暴な黒い竜のようなデジモンはその場を去っていった。

「いけぇ!ブイドラモン!」

黒い竜のようなデジモン、デビドラモンはブイドラモンの全体重を乗せたパンチをよける。

「まだまだぁーっ!グリズモン!!」

ブイドラモンの攻撃をよけたデビドラモンに、鋭い爪でグリズモンが攻撃を仕掛ける。
だが、巧みなフットワークでよけられる。

この状況から15分ほど前だろうか・・・
博紀が何かの気配を感じ、それについて話しているときだった。
またしても同じような影を見かけ、デジモン達は攻撃する。
すると、やっとそのデジモンは姿をあらわす。
デビドラモンであった。
敵が成熟期と分かれば、進化できる状況のうちに進化する。
そして、今の状況にあたる。
戦況は攻撃をよけられているものの、だんだん攻撃が敵のスピードに追いついていた。

(この調子で・・・)

条たちは状況をいっぽはなれた場所で見守っている。
この調子ならいける、そうおもっていた。
だが、一つだけ心配なところがあった。
敵は攻撃が段々あたりそうになっているのにもかかわらず、余裕顔でいる。
こんな状況など余裕なほど圧倒的な力を持っているかのように・・・

デビドラモンは爪を鋭く光らせながらブイドラモンに接近する。

「くらえぇっ!」

数発食らったら成熟期デジモンであろうと致命傷になりかねないほどの攻撃力。
しかし、デビドラモンの爪の攻撃は、ブイドラモンには当たらなかった。
ブイドラモンは、当たる前にすでに高くジャンプしていた。
デビドラモンの攻撃は木を切り裂いただけであった。
そして、デビドラモンは手応えはあったが明らかに攻撃の対象ではなかったことに気づき、またハンマーパンチを仕掛けてくるのかと思い、身構えた。
だがそれも当たってはいなかった。

「ブイブレスアローっ!!」

上空からブイドラモンが口から高熱線を下に、つまりデビドラモンに向かって放つ。

「クリムゾンネイルゥッ!」

デビドラモンは予想外の攻撃に驚き、よけるのには遅かった。
だが、熱戦を真紅に光る爪で引き裂き、爪がジュゥゥという音を立てる。

こんな状況なのにあと他にも敵が3人もいる。
そうなると、戦況的に有利であるわけがない。そう考え、ついに自分の能力を発揮する・・・

「貴様らと遊ぶのはもう終わりだ!」

デビドラモンはそう言い、赤い目を光らせる。

「く、目をつぶれ!!」

怪人メドゥーサに石にされないためには直接見なければいい。
コカトリモンのぺトラファイヤーとは違い、見なければいいのだ。
条がそう考え叫んだが、すでに遅かった。
デジモンたちは、体の大部分が石化する。

「ぐ・・・」
「動けない・・・」

ブイドラモンら4人のデジモンは、突然自分の体の自由が利かなくなったこととその理由を理解すると同時に、危険を感じた。

「さて・・・動けない貴様らなど、取るに足らない存在よ・・・」

デビドラモンはそういいながら、一歩一歩近づいていく。
不敵な笑いをしながら・・・

「や・・・」

条は、目に映る今やられるかどうかの瀬戸際にいる自分のパートナーデジモンを見る。

「やめろぉぉぉぉーーーーーーーーーーーおっっ!!」

条はデビドラモンに向かっていく。
頭で理由など考えもしなかった。
とにかく行く、それしか頭にはない。

「やめろ、条!!」

博紀がとめに行こうとしたときだった。

「・・・助けたいか?」

条は予想外の言葉に、握っていた拳を広げ、足をとめる。

「助けて・・・くれるのか?」
「ふっふっふ・・・パートナーが大事なようだな・・・よかろう。ちょっと駆け引きでもしようじゃないか。俺はこう見えてもゲームが好きでな。」
「・・・どうするって言うんだ?」
「それを説明するには、まず俺の石化を説く方法を教えよう。一つは『俺にダメージを与えること』だ。もう一つは、『アイテムで石化をとくこと』だ。」
「アイテム・・・?」
「解石薬と言ってな・・・俺に誤って石化された際、石化を解けるように、エリアを守るデジモンたちに渡している。」
「解石薬?」
「つまるところ・・・俺はちょっとこれから用があるものでな。今からここを離れてもいい。その間お前らはデジモンたちから解石薬をぶん取ればいい。だがしかし、俺が帰ってきたらタイムアウトだ。せいぜいがんばれ。俺もゆっくり飛んでやる。ぐぁっはっは!」

デビドラモンは笑うなりすぐ空へ舞う。
子供たちはそれを呆然と見ているしかなかった。

「で・・・どうするんだよ・・・」
「行く・・・しか・・・ないだろ・・・」

条が再び拳を固める。
しかし、その拳は殴るためにできたものではない。
決意の証だった。

「俺たちが何とかするしかないんだ。俺たちが・・・」

条がそういうと、皆が走り出す。どこへ向かったわけでもない。
ただ、信じられる未来を信じて走っていく・・・

            続く