朝になった。
あたりがぼんやりと明るくなる。
昨日の戦いでかなりの疲労があった子供たちとデジモンは、まだぐっすりと眠っている。
全員が起きるのはこれから2時間あとのことである。
しかし、この時点で博紀は気づいていない。
自分のポケットに条や知己が持っている機械があることに・・・

「ふぁあ〜〜」

博紀が目を覚ます。
辺りを見てみる。まだ全員寝ている。

「ったく・・・まあ、オレももう一眠りするか・・・」

そういって眠りに入ろうとする。

「寝るなよ、博紀」

ハグルモンが言う。

「は?なにゆえ?」
「わからないのか・・・?」
「何が・・・?」
「ったく〜、物知りのくせに探究心ってやつがないのかよ〜」
「んで?」

博紀は乱れてたれてきた前髪をうっとおしそうに後ろにやりながらいう。

「なあ・・・これからちょっと探ってみないか?」
「どこを?」
「このあたりだよ〜もしかしたら、デジモンが住んでて、食料分けてもらえるかもしれね〜ぞ」
「いや・・・そりゃおまえの食料は油だし・・・食うにしても油に変換されてエネルギーになるんだろ?」
「まあ・・・そうだけど・・・でも、行ってみようぜ。」
「だから・・・必ず食料があるわけじゃないし、もしいるのが敵とかだったらどうするんだって・・・」
「それはおれがしっかり博紀を守るって!」
「守る・・・ね・・・そこまで責任取ってくれるって言うんだったら行くか・・・」

好奇心旺盛のハグルモンに連れられて博紀も歩く。事実博紀も探求心が強い。

「んで・・・?何でわざわざこんなところを?」

博紀は頭を上に向ける。
そこは崖。に近い坂のようの場所。

「これを・・・登れと・・・?」
「もちろん♪」
「で・・・?どうやって上る?」
「オレはある程度までは反重力、つまり浮くことができるけど・・・ある程度だし・・・それに博紀を持ち上げるほどオレパワーないしなぁ〜・・・」
「・・・わぁったよ・・・オレは自力でのぼるから何とかしてろ」

10分後・・・

「畜生・・・こんな適当な進み方ってありかぁ〜・・・」
「愚痴ってないで、さっさと行くぞ〜・・・・」
「ちょ・・・待てって・・・」

流石と言うのだろうか・・・ケインコスギに憧れを持って(他にも理由はある)鍛えた体だけあり、博紀は斜面が急ではないこの程度の崖は余裕でクリア。

「んで・・・?これからどうするって・・・はっっ!おいっ!」

「んどうした博紀?」
「あれだよ!あれ!」

ハグルモンは博紀の指差す方向を見る。

「!!」

博紀とハグルモンが見たもの・・・
それはちょっとした洞窟ほどの大きさの洞穴。

「ハグルモン・・・ここら辺でなんか噂無いか?」
「ん〜・・・ここの荒野が出来た理由の言い伝えがあるんだ・・・元々ここは草原のような緑豊かなところだった。そして、そこに戦争で追いやられた機械の部族が住んだといわれている。その部族たちは、この地に新たな住処を作った。しかし、ある程度のときが過ぎたある日、その機械の部族の敵にあたる魔術の部族に見つかってしまった。機械部族たちは、必死で抵抗した。なかでも、機械部族の中の首領の『限り無い大砲』は威力が高く、町一つはぶっ壊すほどだった。その戦争の際にこの地域の緑は一瞬で火の海。しかし、必死の抵抗空しく、機械の部族は魔術の部族に負けてしまった。残った機械の部族は身を隠し、懸命に生きたという。この結果、ここら辺一体は荒野になったってわけさ・・・」
「なるほど・・・ならあの洞窟は・・・メタルエンパイアのか・・・」
「なあ・・・博紀・・・いったん戻ろうぜ・・・」
「ばっきゃろぉっ!言い出しっぺは誰だ?責任とるっつったくせによ・・・」
「博紀ぃ・・・でも、マジでホント危ないぜ・・・分かるんだ・・・直感で・・・とんでもなく強いやつらがいるって・・・もしかしたら俺がマシーンがただからより分かるのかもしれない・・・あっ!」

ハグルモンが見ると、博紀がすでに入り口に向かって歩いている。

「弱音吐くんだったらさっさとみんなのところへ戻れ・・・」
「待ってくれよ、博紀っ!」

ハグルモンが必死に追いかける・・・

「おい博紀〜。もし機械の部族たちが襲って着たらどうするつもりだよ〜」
「・・・逃げるか・・・やるかだ・・・」

博紀はそう答えるとまた淡々と歩き出す。

(博紀・・・)

洞窟の中は異様に寒気がした。
妙に薄明るく、それはまるで地下帝国の入り口のようだった。

「鍾乳洞・・・どう見ても人工物ではない、天然物だな・・・」

博紀はたまにそのように言いながら、興味ありげにあたりを見回す。
そしてしばらくずっと続く一本道を歩いていく。
しかし、行き止まりにあたってしまった。かなり広いスペースがあるそこには、2体の石像に囲まれた、レリーフがあった。

「色んなデジモンの石像があるぜ・・・」
「レリーフには、サイボーグ型デジモンやマシーン型デジモン・・・そそてこっちには妖精型デジモン・・・それにウィザーモンとかがいるな・・・恐らくさっき話を聞いたメタルエンパイヤデジモンの生き残りが彫ったんだろうが・・・」

博紀は、そこであることに気づいた。
ウィザーモンの目の部分が、空白になっている。
そして、足元にはちょうどいい大きさでちょうどいい形の赤い石があった。

「ん?なんだこれ?」
「なんかのわなだったりして・・・」
「いや・・・レリーフを見る限り、かなり前のものだ・・・この世界の歴史はいつからかは分からないが、少なくとも1000年は立っている。ずっと生き残りの部族が生きているか?」
「そりゃ・・・そうだけど・・・」
「もしかしたら、もっと歴史について分かるかもしれない・・・」
「でも・・・」
「ま、頼りにしてるよ、何かあったら。」
「え・・・?」

石をはめる。
すると、一瞬だけウィザーモンの目が光ったような気がした。

「・・・光ったのは不思議だが、何にも起きないな・・・」
「なぁ〜んだ。敵が出たらぶっ飛ばしてやったのに。」

その時だった。
後ろの石像1体がピシッと言う音を立てた。
まるで、石の殻を破るように・・・

「た、タンクモンの石像からなのか、今のは・・・」

石像に歩み寄ってみると、ひびが入っている。
しかし、博紀は逆に興味深く探っている。

「博紀・・・」

ビキィィッ!!
大きな音をたて、石像のひびが大きくなる。
石がはがれた部分は、緑色の鉄があった。

「うおぉぉっ!」

博紀が慌ててその場から3歩ほど後ろに下がる。

その衝撃でか、あるいはもうそうだったのか、石像はまるでレンガを砕くような音とたて、『表面』の石が全て剥がれ落ちる。
そこには、装甲に身を包み、頭部にキャノン方をつけたデジモンがいる。

「・・・・・・」

タンクモンは無言だった。
だが、その鋭い目つきで、自分たちをデリートしようとするのが博紀とハグルモンは分かった。
そしてハグルモンは、どうせ戦うことになるのなら、と考え、身構えた。

「ダークネスギアッ!」

ウィルス入りの歯車をタンクモンに向かって投げる。
入り込めるような体質の敵にとっては、ダメージはともかく、敵を狂わせる点においては、成熟期でも食らったら戦闘は厳しくなる。
だがしかし、装甲に身を包んだタンクモンには意味がなかった。
歯車は、キンッ!と金属同士がぶつかる音をたて、むなしく地面に刺さり、そのまま消滅した。

「く・・・」

「・・・・・・・・・・・」

タンクモンは無言のまま腕を持ち上げ、腕の銃弾を敵であるハグルモンに合わせる。
そして弾を放つ。ハグルモンは、その攻撃をよけるが、タンクモンは照準をなおも合わせ続ける。そのため、遂にはハグルモンに弾丸があたってくる。

「ぐぁぁぁぁ!」

「ハグルモン、大丈夫か!?」

博紀は思わずそういった。
ハグルモンはすでにかなりのダメージを受けていた。
そしてタンクモンは、相手がすでに瀕死に近いことを理解し、次に現れたターゲットに攻撃を開始しようとした。

「や、やめろぉぉぉぉぉ!!」

ハグルモンはそう叫んだ。
次の瞬間、博紀のポケットから異様な強い光が発せられた。

DPLUSEVOLUTION

「これは・・・」

博紀は、まず自分のポケットに目を向けたが、すぐに向く方向が変わった。
自分のパートナーデジモンが、神々しい白い光に包まれている。

「ハグルモン進化ぁぁあああああああああっ!!」

ハグルモンは、光の中で姿を変える。

「ガードロモンッ!!」

光が収まると、そこには赤茶けたいかにも頑丈そうなデジモンがドンと居座っている。

タンクモンは、目の前で進化が起こったことに、一瞬驚いた顔をしたが、すぐにまた表情のない顔になり、無言でサブバルカンをガードロモンに放つ。
しかし、ガードロモンはそれを腕で難なく防ぐ。

「す、すげぇ・・・防御力が格段に・・・」

ガードロモンは、相手が弾切れになったころを見計らい、タンクモンめがけて手をグーにして突進する。加速をつけたその重量級のヘヴィパンチは、タンクモンの兜にひびを入れた。

「ぐっ・・・」

タンクモンは苦痛のあまり、やっと言葉を発する。
そして、タンクモンは眉間にしわをよらせ、気合を雄たけびを叫ぶ。
ガードロモンは、腕を水平に上げ、攻撃態勢に入る。

「ハイパーキャノンッ!!」
「ディストラクショングレネードッッ!!」

頭部につく巨大なキャノン方から、ミサイルが発射される。
しかし、それと同時に、ガードロモンは追撃システムつき手榴弾を放つ。
空中でタンクモンの必殺技と、ガードロモンの必殺技がぶつかり合う。
だが、ガードロモンは、両腕から放ったため、一発がすでにないとしても、もう一発があった。
タンクモンは、煙が静まってくるとようやくそれに気づき、重戦車とは思えないほどのスピードで慌てて逃げていく。
しかし、途中遂に行き詰まり、壁を掘ろうとするが、その前に手榴弾が直撃し爆発した。
タンクモンは消えるとき、何かを言ってたようなきがしたが、痛みと苦しみの規制が混ざったその声を聞き取ることは出来なかった。

「ふっ・・・」

ガードロモンはがそうつぶやいた瞬間、ハグルモンに退化してしまった。

「博紀ぃ〜!」

ハグルモンは博紀に向かって飛んでいく。

「すげ―じゃん、あはっはは!」

いつもの姿から想像できない姿だった。
博紀は本当にうれしそうな顔をしていた。
が、しかし、その笑顔もすぐに消えた。
洞窟の奥から、まるで地震が起こったときのような音がしてくる・・・

「やばくない?」
「やばいよ、絶対これ崩れる、早く逃げよう、博紀!」
「あ、ああ・・・!!」

ハグルモンと博紀は、全速力で逃げる。
途中、後ろで土砂が落ちてくるのが分かった。

「ハァ、ハァ・・・」
「つ、疲れた・・・」

二人は息を荒め、洞窟の外で休んでいる。

「しかし妙だ・・・鍾乳洞はそんなにも崩れるものじゃあ・・・」
「でも、俺の技の威力がすごかったら、絶対無いなんていえないだろ。」
「ま、それもそうか。」

二人は笑った。
何かを得られたように笑った。

寝ていた場所に戻ると、そこにはデジモン達が何とか集めてきたほんの少しの食料があった。

「どこへ行ってたんだ、お前ら。」

条がそう聞くと、

「・・・アドベンチャー・・・かな?」

そう答えると、「なんだそりゃ?」といわれた。

「ほぉー、やけに機嫌いいな。なんかあったか?」

知己がマイペースに条の質問が完全に終わってないことを無視して、知己が言う。
すると、ハグルモンと博紀は顔をあわせ、笑顔でこう答えた。

「アドベンチャー、さ。」


        続く