世界
それはいろいろな種類がある。
自分たちが普通、というのはありきたりな一般概念であり、むしろ自分は違うと思う人間はいないであろう。
しかし、これから意識をしなければならない。
並行世界、別次元といわれるものなどは、現在いろいろな説が出ていて、まとめられてきている。
あなたは別次元を信じますか?

「お前は別次元を信じるか?」

そういったのは胡坐をかいている体格がっちり少年博紀である。
話した相手は体育座りの博也。

「だからさ、その別次元ってのがよく分からないんだけど・・・」
「・・・おいおい、何回も同じことを言わせるな。つまり、俺の父さんや母さんたちがいる世界が、
俺たちが元からいる宇宙空間のある世界であって、ここはデジタルワールド、もうその世界とは違うんだ!」
「う〜ん、なんとなく・・・分かったかな?」
「なんとなくでは駄目だって・・・だからな、俺たちがいる世界一つしかないという考え方は無効だ。
世界はいくつもあり、たとえるなら宇宙の星屑、いやそんな数ではすまないほどあるかもしれないんだぞ!」
「・・・わかったよ。時間が違うのは何でだ?」
「まず、俺たちの『時間』の考え方だ。俺たちにとっての時間は、日が沈んだり、日が昇ったり、
そういう自然的なものを利用した概念だと思うのが一般的だ。」
「一般的・・・ね・・・」
「だがしかし、その考え方だと時間の流れが速いと日がすぐ沈んだり上ったりして、
俺たちがその環境に適応していないことになる。そこでだ。時間というのは紙芝居の紙と考えていただこう。
そして俺たちは登場人物だ。登場人物は紙の動きに合わせて動きの速さが替わる。つまり、その世界の時間の流れが違うとしても、
俺たちの感覚は変わらないんだ。」
「・・・ああ、頭が。」
「分かりやすく説明するとだな、さっきの紙芝居を用いる。紙芝居のキャラクターが抜けた柄を考えてもらおう。
それが一方向に平行に並び、俺たちはそれをくぐりながら動いている。どうだ?」
「・・・パァ〜〜〜!ああ、喋々だよ、菜の花に止まっているよ〜」

先ほど、博紀に大量の質問を浴びせた博也は、まとめの回答をもらっている。
しかし、これは一般の小学生の理解は難しい。

「おいおい博紀、俺でも理解できなくなったぞ。」

妹である流美とパートナーのエレキモンと一緒に寝転がってた条が言う。

「だからなぁ、時間の流れが違うのは、並行になっている時間ごとに作られている世界の間隔であって、その長さが違うことによって・・・」

知己はベアモンとともに博紀の話を子守唄にして眠り、真希はフローラモンに地面に図を書いてもらいながら簡単に要約して説明してもらっている。

「・・・なあ、誰か聞いてよ。」

博紀がついに折れて聞いてくれるよう懇願したときであった。

「やあ。ここにいたのですね。あなたたち。」

一人のデジモンが姿を現した。

「・・・?」

条は寝転んだ体を起こしてそれを見た。
そして、知己は自らの鼻ちょうちんとベアモンの鼻ちょうちんがぶつかったのでおき、目をこする。
そして他の一同も、そのデジモンに注目する。

「ああ、ウィザーモンだ!」

エレキモンが大きい声で言った。

「ええ、私はウィザーモン。ウィルス種ですが、ご心配なく。私はあなたたちに危害を加えるつもりはありません。」

ウィザーモンは条たちに礼儀正しく挨拶。

「俺は知己、そしてこいつは俺の相棒のベアモン。そこにいる薀蓄たれそーなやつが博紀。」

と知己は返したが、

「誰が薀蓄だ・・・ご紹介あずかりました俺が博紀。それでこいつがハグルモンさ。」
「あ、よろしく。」
「私が真希。それで、こっちがフローラモン。」
「私は流美、そしてペンモン。こっちが博也ね。」
「で、こいつがコクワモン」
「よろしく。」

と自己紹介を子供たちがし終わると、ウィザーモンが再び口を開いた。

「ご丁寧にありがとうございます。まずは私がここにいる理由をお話しましょう。」

ウィーザーモンは帽子を深くかぶりなおし、その場に腰を下ろして語りだした。

「私たちが今いる世界、デジタルワールドはどのような地形で成り立っているかご存知ですか?」

それを聞いて博也が一瞬、やれやれ、また世界の話かと面倒そうな顔をしたが、他の全員が真剣に聴いているのですぐに集中した。

「いや・・・知らないけど・・・」

条がしどろもどろ気味にこう答えると、

「やはりそうでしたか。それでこそ私が来た意味があるというものです。
この世界は、この「フォレストタウン」などの名称もなく、ずっとずっと太古の時代。
10個の都市に分かれていました。それらは十闘士デジモンが支配し、都市同士は交流はほぼなかったそうです。
ですが、これらの都市には共通点が。ありました。」

と博紀が

「交流がないのに共通点?」

と身を乗り出して訊くと、ウィザーモンが話を続けながら答える。

「そうです。これらの都市には、『それらの種族のデジモンしか受け付けない』ということです。
闇なら闇のデジモン、水なら水に生きるデジモン。それらのデジモンしか受け入れられませんでした・・・」

「なら、それ以外のデジモンは何故いるの?」

と真希がいった。

「そこなんです。私はそこが言いたかった。
あなた方はここに幼年期デジモンが多いと感じませんでしたか?
生まれたばかりの弱いデジモンたちは、この神がいる場所に近いとされるフォレストタウンで守られて育つのです。
つまりここは生命の始まり、自然の森の町。生まれたデジモンはその後成長します。
そこからデジモンたちは放浪し、それぞれのエリアで集団で集まっていった、というのが都市の始まりですね。
もっとも先ほどもいいましたが、その頃はフォレストタウンという名前もなかったですがね。」

「ねぇ・・・博也分かる?」

と小声で流美が訊いた。

「・・・後で兄貴にきこう・・・」

ウィザーモンの話はなお続く。

「そしてそれは太古の昔。
時がたつと、都市ごとにさらに種族が分けられ、独立したり、あるいは仲間にされないものたちが部族になったりしました。
つまり、小さな町や村が多くできていったのです。
ですが、元からあった都市と違い、生存率は厳しい。どうしたとおもいます?」

「しらねーな。俺頭があまりよくないんでな。はっはっは」

知己はそのときばかりは楽天的に笑っていった。
だが次のウィザーモンの冷ややかな笑いと言葉でそれは止まる。

「殺し合いですよ。食料やバトルの経験として。部族同士での戦争が起こったのです。」

「殺し・・・」

流美は内股の姿勢をさらに固め、ぞっとした、という顔をして兄を見る。
だが条とて、これは予想外の言葉であって、こちらを見られても戸惑うばかり。

(争い・・・)
ただ、戦争や殺し合いから連想された言葉。
真希にとってはこの言葉はとてつもなく重い。
いい争いをする声。仲裁に入ろうとする少年。
いつ殺し合いが行われるのだろうか・・・緊迫した空気、私は・・・どうすることもできない・・・
助けて・・・誰か私を・・・

「真希?」

真希は急な声ではっとし、その声の主であるフローラモンを見る。
心配そうにこちらを向き、花の手で軽く肩をたたくいている。

「あ・・・フローラモン・・・」
「顔色悪いけど大丈夫?ウィザーモンが今この世界について話しているところ。あとで私が教えるから、しばらくゆっくりしてれば・・・」

フローラモンの純粋にテイマーを心配する心から出た言葉を真希は受け取り、

「うん・・・ありがと・・・」

とだけいい、先ほどの一瞬蘇った記憶を振り払おうと、ウィザーモンの話に集中しなおした。

「戦争・・・だと・・・?」

博紀が確認する。
ウィザーモンは杖を持ち直し、博紀を見ながら再度、同じ台詞を冷淡な口調でいう。

「そうです。戦争です。」
「・・・ここから少し行ったところに・・・崖というべきかな。今は埋まっているが、そこに洞窟があってな。その奥に、お前さんやそのほかのデジモンたちの古代のレリーフがあった・・・それと何か関係があるのか?」

博紀が言った。すると、

「お前さん?お前さんって・・・ははは。1000年以上前に私が生きているはずないでしょう。仮にその遺跡に私に似た様なデジモンがいても、他人の空似ですよ。」

とウィザーモンは笑いながらそういった。

「ああ、それもそうだな。変なこといってすまないな。話を続けてくれ。」
「そうさせていただきます。そしてそんな戦争が繰り返される日々が続いたある日。
ゴク小さな部族も大量にありましたが、その小さな部族がちに狂ったような症状が出るデジモンが出てきました。
デジモンとしての理性を失い、獣のような目をして暴れる。」

それではっとしたのは博也と流美、コクワモンとペンモン以外の全員。

「最初はどの部族も都市も気にかけはしませんでした。
が、だんだんとそのデジモンの数が増えていきました。
さすがに警戒し、都市では今はなき十闘士の精神に願い、結界をはってもらったり。また、瘴気を避けられるデジモンたちの部族はバリアを作ったり。そしてそのウィルスのようなものの影響が少ないといわれる地下に逃げたり。それぞれ対処はしていました。ですが、その症状にかかったデジモンたちを部族たちは追放し、放浪生活をするデジモンと、それと隔離されたデジモンに分かれました。デジモンの大多数は感染していなく、ウィルスにかかったデジモンしかそこらをうろつかないわけです。」

「ウィルスの特効薬はないのか?」

エレキモンが自分もデジモンのためか訊い

「いいえ・・・電脳核そのものに影響するので・・・」

との答えだった。

「つまり、この世界はもともと大きな都市に分かれていて、それらが自然に部族などを生み出し、さらに戦争をした・・・ということ?」

フローラモンが問うたが、

「私の話はまだ続きます。まとめるのは早いですよ。」

と流されてしまった。
すると博也が、

「それじゃあその続きさっさと話してくれよ。」

とさいそくした。

「わかりました。・・・重要なのはここからです。
ウィルスは何故発生したかと思いますか?」

とウィザーモンの問。

「自然に発生していくのがウィルスじゃないの?」

と流美は答えた。

「あなた方の世界ではそうなのですか?ここはデジタルワールド。
バグがあってもデジモン自体にほぼ影響はありません。
少なくとも誰かが『作らなければ』ね。」
「おい・・・誰かが作るって・・・」

条が冷や汗をかきながら言った。

「そうです・・・部族たちは思いました。もしかしたら争いをしてきたほかの部族がばら撒いたんじゃないか・・・とね。
部族間の関係は泥沼。戦争はウィルスのせいであまり起きませんが、もしあなたたちがこの世界を救うのであれば。
まず部族間の誤解を解き、ウィルスの元をはっきりさせる必要があるのですよ。」

「・・・そういうことか・・・OK。まっかされよー。」

知己は即答し、

「なー、ベアモン。」「ああ、任しておけ!」

とベアモンにも同意を求めたが、

「おいおい、ちょっと待て。」

と条が割って入り、

「一体どう行動すればいいかも分からないのにか?軽々しく言うなよ!」

と講義した。
が、

「いいや。俺も行くね。」

と博紀。

「え・・・ちょっと待てって・・・」
「私も行く。」「俺も行く。」「私も。」

真希、博也、流美も賛成。

「条・・・みんな賛成なんだぜ?俺たちも行こう。」

エレキモンにそういわれ、

「ああ・・・わかった・・・俺もみんなに従うよ。」あ

と全員一致で決まった。

「が、その前に。一つだけ教えてくれ。」

と盛り上がるみんなを一旦静める一つの質問。
ウィザーモンはその質問をした条を見て、

「なんでしょう?」

とにっこり笑いながら答える。

「俺たちは、何故ここに着たのか。」

条は真剣な目つきで答えたが、

「それを私は説明しに着たんです。いずれあなたたちも分かるはずです。では、ここから一番近いのは天空の城、グレイトウィングです。皆様には期待していますよ。」

ウィザーモンはその言葉だけを残し、背を条たちに向け、去っていった。

「グレイトウィング・・・か・・・」

条はただそうつぶやき、とりあえずみんなに長い話だったので少し休もうといい、自分なりに状況をまとめていた。



はたして・・・彼らはこの世界をどう変えられるのだろうか。
私はそれが楽しみだ。

       続く