この世界の歴史は一体どれくらいのものなんだろうか。
博紀はあの遺跡のことを思い出すたびに考える。そしてその場所に今向かっている。
見ても荒れた荒野。そして、急な斜面がある。あそこを上ればいいのだ。

「みんな。あそこの崖だ。」

博紀がみんなに届くようにと大声で言う。
そして少しあること問題の崖がある。
博紀と知己は雄たけびを発しながら勝手にレースを開始する。
博也が「待ってよ兄貴!」といいながら慌てて追いかける。
しかし、流美は、

「これ・・・登るの?」

多少心配そうに言う。
すると兄である条は、

「・・・大丈夫。手を貸すよ。」

真希はその光景を横目で見ながら今登ろうとしていた。
兄妹愛。そんな言葉が頭をよぎった。
そして・・・自分は・・・
そう考えた瞬間、真希は自分の感情を抑えた。
体中に寒気がしたのだ。

(抑えなきゃ・・・じゃないと・・・また・・・)

過去。
真希はそれを克服するまでまだ時間がかかる。

「おい、どうしたんだ?」

真希は妹を手を引いて崖を登る条の声ではっと我に帰った。

「あ、うん。今行く。」

急な斜面を登ると、岩に埋まった元洞窟。
現在はただの岩塊だが。

「うわっはーっ!見事に埋まってるな・・・」

知己は洞窟の入り口だ他部分に堆積している岩をコンコンとたたく。

「なぁ・・・どこだったっけ?あれ。」
「光点の場所か?」

子供たちはおおよその位置しか推測していなかったので分からない。

「ああ・・・何とかなんねえかな・・・」

知己がそうぼやく。
なんかないかと、ポケットを探ろうとした。
すると、ポケットの中の物が光っている。

「デジヴァイス!」

他のものも光っているのに気付いた。
まだデジヴァイスをもっていない流美と博也は興味深く見ている。
その光はある地点をさしていた。

「知己、そこどけっ!」

光の意味をいち早く理解した条が言った。
ちょうど知己が立っている場所を示していた。

「ん?ここに!?」

知己は足元を軽く蹴ってみる。

「何?その光!」
「なんかすごいぞ!」

博紀と流美が光のさす場所に向かった。
すると水の中に沈めたボールのように、何かが浮かんでくる。
それは二つあった。一つは博也の手、もう一つは流美の手に導かれるように。

「・・・?」
「なんだ?これ。」

適当に二人がデジヴァイスをいじる。
すると、デジヴァイスが出てきた地点から、もっと大きな何かが浮かんできた。

「・・・!!」

一番近くで見ていた知己はすぐそれが何かかわかった。
デジモン。
その2体のデジモンは閉じていた目を開く。

「はじめまして。僕はペンモン。よろしく。」
「えぇ・・・と・・・コクワモン。博也、よろしく。」

二人に差し伸べられた一つずつの手。
片方の手はビンタが得意そうな平たい手。また片方は小さいはさみのようなプラグっぽい機械の手。
博也と流美はそれを握る。

「私流美。よろしくね。」
「すげえぇっ!俺の名前知ってる!よろしくぅっ!」

博紀と条はその光景を何も言わず見つめていた。
それは自分の弟と妹がこれから危険なことに巻き込まれていくことを確定事項にする光景だったのだから。だが、

「えっへへ。」「あっはははっ!」

うれしそうに微笑んで自分にパートナーデジモンが出来た二人を見ていると、二人の兄の心は和んでいった。
きっと・・・俺たちを守ってくれるように、あいつを守ってくれるはずだ。
博紀と条は傍らに付き添うパートナーデジモンに一瞬目をやり、自分の弟、妹に微笑んだ。

「一緒に粂たちを守ろうな!」
「おう!俺達の仲間になるんだからな!」

デジモンたちは新しいデジモンが自分たちの元へ現れて活気付いた。

そう、はしゃいでるデジモンたちと子供たちは気づかなかった。
自分たちを見る怪しい影に・・・

「あの〜、すいません。」

ヒョロッとしたイメージを与える声に子供たちは周りを見回した。
声を発した人物は上空にいた。

「・・・なんですか?」

条がその人物の姿を見て違和感を感じながら訊き帰す。

(こいつ・・・ヤンマモン・・・なのか?だが色が少し違う・・・
デリートされた後に復活し、その影響か?いや、それはない。
こいつはおそらく同種のサンドヤンマモンだ。
ということは・・・ヤンマモンに関係が?)
博紀および真希は同じことを考えていた。博也と流美に置いては初対面である。
デジモンたちは当然記憶している。
だが、1名だけ、1名だけその空気を読まないものがいた。

「あーっ!お前!」

突拍子な声に巨大なトンボのような姿をしたデジモンが、

「私ですか?」

と応答する。

「あのウッドモンにやられたヤンマモンかーっ!?」

ピキーン
空気が凍りつく。もちろん全体ではない。
流美と博也やコクワモンおよびペンモン、そして知己以外は。

「首領が・・・死んだ!?」

サンドヤンマモンは声を震わせる。
すると知己は、

「あれー?人違い?すまんすまーん。あまりにも・・・」

知己は振り返って、

「こいつが倒した弱いやつに似てたからよーっ。なははっ!」

と、フローラモンの肩をペチペチたたいて能天気に言う。

馬鹿・・・
知己を除くメンバーがすべて心の中でつぶやいた。
ここまでくれば流美や博也も気づいてくる。

「貴様ら!首領を!よくも首領を!」

サンドヤンマモンは今度は驚きではなく怒りで声を震わせる。

「あん?首領?っていうことはー・・・」

気づくのが遅いだろう、どうみても。
知己はやっとオニヤンマグループのことを思い出した。

「このやろぉぉおぅうっ!」

前足の爪を知己に繰り出す。
グァシュィッ!

「ぐぬぬぬぬ・・・」

ベアモンが即飛び出し、前足を自らの両手で押さえる。

「く、こしゃくな!」

腕を思いっきり振ってベアモンを投げ飛ばす。
しかしベアモンは空中で受身を取り、なんなく着地。

「大丈夫だ、あいつもヤンマモンと同じぐらいの力量しかない!」
「おっしゃぁっ!俺も行くぞ!」

エレキモンは前に構え、

「スパークリングサンダーッ!」

尻尾で強化した静電気を飛ばす。
それは見事にサンドヤンマモンへ命中、電流を受ける。

「ギャギャギャギャギャァッ!」

「ねぇ、ペンモン。」
「コクワモン!」
「ん?」「なんだい?」
「がんばれっ!」

二人はパートナーの背中を押す。
おいおい・・・と兄上二人が苦笑い。

「ハグルモン、コクワモンとペンモンのサポート頼む。」

博紀の指示通り、ハグルモンはまず、

「ダークネスギアッ!」

背後に回りこみ敵を狂わす歯車を射出する。

メリョメリョォ

「ぎにゃぁ?何をした!」

見事にめり込み入っていった。

「く、何だか分からんがくらえっ!」

サンドヤンマモンはハグルモンのほうに振り向き、鋭い爪を突きつけるように突進する。
しかし、ハグルモンは冷ややかに笑い、

「無駄だよ〜。」

スカッ!ビキッ!
手ごたえは確かにあった。だが、それはハグルモンにあたった手ごたえではないのは攻撃した本人であるサンドヤンマモンも分かっている。
体が・・・うまく動かない・・・

「くっそぅ・・・!」

何回も爪を地面に打ち立てた、狙いは地面ではないのだが、なかなか当たらない。

「何回も同じこといわせるなよ〜。俺を狙えばむしろ外れる。お前が俺に向かって攻撃する限りあたりはしないぞ。」
「く・・・ならばっ!」

サンドヤンマモンは適当な方向を向き、羽を高速で動かす。

「デザートウィンドッ!」

土地の環境が荒野であるため、砂の固まりが大量に上がる。
広範囲攻撃に移ったのだ。

「ぐわぁ!」「ぐっ!」

しかし全体にあたったわけではなく、あたったのはハグルモンとベアモンだけであった。
二人は空中に上げられ、砂が容赦なく体に打ちついているのを感じる。

「ハグルモンッ!」「ベアモォン!」

二人はパートナーの名前を叫んだ。

「っくっくっく・・・」

だが、いきなりヤンマモンが空中でバランスを崩した。

「シザーアームズミニッ!」

コクワモンは高速で動く羽にはじかれながらも、
電流を流したそのはさみの腕で羽の数本を切断した。
そしてハグルモンとベアモンが、

「うわぁ?」「おっとっ!」

あたふたしながら着地に成功。
そして続いて、

「無限ビンタッ!」

バランスを崩したところでペンモンがヤンマモンの眼前に現れるや否や、ビンタのラッシュ。
ビタンビタンという音を数え切れないほどあたりに響かせる。

「アダダダダダアダっ!」

ビンタので軽く顔がはれている。

「条!行くぞっ!」
「おうっ!」

DPLUSEVOLUTION

「エレキモン進化ぁぁああっ!ブイドラモンッ!」

エレキモンが白い光に包まれ、蒼い腕力の強そうな竜となる。

「く、たかが進化くらい!」

サンドヤンマモンは尾に電気を発生させ、

「ポトムカッターッ!」

それをブイドラモンに向かってきりつける。

「お前が切り技ならこっちも切り技だっ!」

ブイドラモンは爪先に風の刃を作り構える。

「カッターシュートッ!」

3つの風の刃は、ヤンマモンの尾にすべて命中し、電撃でコーティングしていたためかダメージは与えられたが切りつけはできなかった。

「くっ!くらえぃっ!」

尻尾がだめならば今度は再び前足を繰り出す。
しかし、ブイドラモンはそれをものともせず、先ほどのベアモンのように素手でつかむ。

「ぐぬぬぬぬっ!」「ぬぉぁああああああっ!」

力比べとなっている。
位置関係的にはブイドラモンが下のため、多少不利がある。しかし何とか持ちこたえてはいる。

「ふんぐぅ・・・っ!」

ブイドラモンが力んだ顔の筋肉をいったんリラックスさせ、フルパワーを出す。

「・・・っ、だぁあああああっ!」

メシィッ

「びゃぁあああああっ!足!両前足がぁああ!!」

折れてしまっている、完全に。もはや力は入らないであろう。
しかしブイドラモンは容赦なく、胴体を抱えこみ、そのままブリッジに近い体勢になるように後ろにヤンマモンの脳天を地面に突き刺す。
ドゴォッ!っとの音。それと同時に「ビヘェグッ!」という痛さのあまりかの奇声。

「バックドロップッ!」

博紀がプロレスのギャラリーのように言う。
そしてブイドラモンの追撃。
ズボッ!と突き刺さった頭を抜き、空中に放り投げる。

「ブイブレスアロォオオオーッ!」

その高熱熱戦は間違いなくヤンマモンの尾にあたり、そこから熱線は勢いよくあたり続けて全体を包む。

「ぎゃぁーーーーー・・・」

悲鳴はすぐに小さくなり、デリートされた。
エレキモンも戦闘の終了に伴い元に戻る。そして、条に親指を上にして手を突き出し、笑顔を見せる。
条もそれに反応し、同じようにGOODのサインを出す。
そしてそれぞれのデジモンたちは自らのテイマーの元へ行く。

「お疲れ様、エレキモン。」「へっへへ!」
「ベアモン、お前大丈夫だったか?」「おうよっ!俺の体はそこまでやわじゃあねえよ!」
「よくがんばってくれたな、ハグルモン。」
「フローラモンもね。ご苦労様。」「ええ。次もがんばるわよ。(何もしてないんだけど、私。)」

そしてペンモンとコクワモン。

「かっこよかったぞ!コクワモン!」「あ、ありがとう!・・・博也!」
「ペンモン、機敏で素敵だったよ。」「どういたしまして〜。へへ!」

この子供たちはやはり環境適応能力が優れているのだろうか。
すでにデジモンたちとのコミュニケーションに違和感がない。
しかし、これはおそらく子供たちの理想であり、夢であったことも絡んでいるに違いない。


「やつら、また一段と腕を上げている。戦闘に余裕が出ている。」

杖を持った一人の魔人デジモンが子供たちから分からない位置から見ている。
先ほどの闘いは次なる冒険の序章だった。

   続く