結局メッセージの差出人は分からなかった。
しかし、ゴーグルを着けた条は何とも無いといっていたので、特に問題は無いだろう。

といっていたのはつい5分前。
今は地下の空間から地上に出て、森を見渡している。
光を取り戻し、豊かで美しい森だった。

「へへへ・・・どーやら、俺たちのおかげみたいだな!」
「ああっ!ベアモン、お前もよく頑張ったな!」

知己がベアモンのてを握る。
それを見た3体のデジモンは、照れながら自分のテイマーを見る。
それを察した条、真希、博紀の3人もそれぞれ友情の証を示した。

「とにかく俺たち、やったんだなっ!」

条が額のゴーグルに当たる光を反射させながら言う。
すると、エレキモンが条の方にジャンプして乗る。

「ああ、俺のおかげだろッ!」

エレキモンはそういったが、決して調子に乗っているわけではない。
自分の勝利であり、それに導いてくれたのは他でもない、テイマーとパートナーデジモンの絆を見せてくれた知己とベアモン、博紀とハグルモン、真希とウッドモン、そして自分に進化の力を与えてくれたグルルモンの犠牲があってこそだったからである。

「おいおい、重いぞエレキモン。」
「俺疲れたんだから少しくらいいいだろ・・・?」
「・・・仕方ねえな・・・・・・」

子供達は日が差し込む草地に寝そべった。

「こんなにゆっくりできるの・・・久しぶりだな・・・」
「ずっと・・・生きるか死ぬかの瀬戸際でしたものね・・・」
「ああ・・・襲ってきたデジモンは何故俺たちを襲ってきたか・・・いまだに疑問だが、今破損疑問は必要ない・・・」
「すがすがしぃーー!」

子供達は本当の自然を満喫していた。
もっともデジタルだから本物じゃないと思うかもしれないが、やはりは世界だ。

「おい、みんなっ!!」

エレキモンが突然叫ぶ。

「どうした、エレキモン。」

条は傍らで休んでいる自分のパートナーデジモンに問い掛ける。
そして条はエレキモンの視線の先を見る。

「うわぁっ!」

驚くのも無理は無い。
木々の陰から色々なデジモンがこちらを見ているのだ。

「なんだこいつら・・・」
「敵意は・・・見たところなさそうだがな。」

一体のベジーモンがこちらに歩み寄ってくる。

「・・・なんか俺たちを見ているが、どうしたんだ?」

条がベジーモンにそう問うと、

「あんたたち・・・やっぱり・・・」

驚いた表情をし、その状況を読んだ周りのデジモンたちは騒ぎ出す。

「ええ?なんだ?何だ?」
「すいませんね・・・ちょっとこっちにも事情がありまして。とりあえず全て話は私から話します。」

・・・
ベジーモンの話はこうだった。
この世界はずいぶん長い歴史を持つらしい。
デジモン同士が戦争したり、またそんな戦いの中でデジモンたちは種類を増やしていった。
最近は、種族同士の争いもなくなり、平々凡々としていた。
昔なら遠くからする爆発音で目を覚ますことだってあったらしい。
だが、その時間は短かった。
世界のデジモンが、少しずつおかしくなった。
まるで伝染病のように、その狂気は広がっているようだった。
デジモンがおかしくなると言うのも、そりゃそうだ。
おとなしいデジモンが暴れたり、さらには目の色が違っているものもいた。
そして前まで、この森は今のように美しく、輝いていた。
そういうのも、この森は「神のいる場所」に近いのだそうだ。
そのためこの場所はその狂気、(ベジーモンたちは「邪」と呼んでいるそうだ。)に侵されるのが遅かった。
だが、森のデジモンたちも狂わされていった。
皆が常に口から涎をたらし、姿を見せたら殺されるかもしれない。
成長期デジモンたちは邪が来ると姿を消す。
森もそんな邪に侵されたのだ。
そんな時。ある日一体の完全体デジモンが闇の力で邪に侵されたデジモンを支配した。
詳しくは知らない。だが、なにやら計画を進めているようだった。
皮肉なことに、奴が来たせいで殺しあうことは無くなった。
だが、どっちにしろ闇に染まっているのに変わりは無い。
そして生きるためには邪に染まった振りをするしかなかった。
でなければ、殺される可能性もあったのだから。
だが、そんなときに子供達が現れた。
邪に侵されたデジモンを数体倒した後、この森に導かれるようにやってきた。
そして、あの忌々しいスカルサタモンを倒してくれた。

「そうさ、この森が救われたのはあんたらのおかげさ・・・」
「そうだったのね・・・」

子供達はそれを聞き、この世界に来たときにデジモンたちがあまり口を開かなかったのはそのデジモンたちが狂っているからだと知った。
そしてこのように邪からデジモンたちを救えるのに倒してしまったことを多少後悔した。

「・・・なぁ、その原因って何か知っているか?」

博紀が目に何かを秘めて言う。
おそらく探究心と救精神からだろう。

「いや・・・残念ながら知らない・・・それを知ったのはここのデジモンがおかしくなり始めてだからな・・・」
「そうか・・・」



「とりあえずフォレストタウンのウィルスは駆逐されたか・・・この大陸では10分の1の面積を占めるフォレストタウンを救うとは・・・流石だ・・・だがしかし、これからはもっと困難になる・・・やはり、人数を増やさねば・・・」



現実世界

ここは東京都のとある家。
彼女は兄のパソコンを使っていた。

「どうせあんまり詳しくないから使ってもばれはしないはず。」

ふと、パソコン画面を見てみると、一つのショートカットがあった。
デジモンのアイコンが表示されたショートカットだった。
彼女も兄同様、あまりパソコンには詳しくは無い。

「なんだろこれ・・・んまぁいいや!開いてみよっ!」

カチカチッ、とマウスをダブルクリックする。

時同じして別の家。

「兄貴の奴・・・また俺を残しやがったなぁ!」

兄の部屋へ侵入、そして吊るしてあるサンドバッグを素手で思いっきり叩く。

「いってぇ!」

サンドバックは重量である上、グローブをつけないで素人が殴ったらそりゃあ手首をいためる。

「くっそぉ・・・兄貴め・・・」

彼は退屈だった。
いつもは兄と何かしらゲームなどをしていたが、今日はいない。
仕方が無い、と自分に言い聞かせ、自分の部屋に戻ってパソコンを立ち上げる。
メモリを最近兄の友人に頼んで増量してもらったため、スムーズに動く。

「あれ?こんなアイコンあったっけ?」

一つのアイコンに目をとめる。
見たところショートカットだが、彼はそんなことまで分からない。

「う〜ん。デジモンウェブのアイコンかな?」

そのアイコンをダブルクリックする。

彼と彼女の記憶はそこから10分ほどない。


デジタルワールド

条達はスカルサタモンのいた空間にいた。
話を聞き、あそこにまだ何かあるのではないかと探してみよう、ということになったのだ。

「知己、そっちはどうなの?」
「うーん・・・なかなか内部データにジャンプできない。」

メカに強い知己は主にパソコンっぽいパネルとにらめっこをし、博紀がそれに付き添う。(もっとも何か関係ありそうなデータを見るくらいの仕事だが)
真希、条、そしてデジモンたちは隠し扉がないかとかいいながら辺りを探っている。

「なあ、これなんだ?」

ベアモンが声をあげる。
どれどれといいながら条がベアモンがさすものを見てみる。
レンズがはめられているもの。映写機のようなものにも見えた。
っと、知己がいきなりそれを横から奪い取る。

「赤外線スキャナ!」
「はぁ?」
「なー、ベアモン。そこら辺になんかないか?」
「ああ、紙切れくらいならあったぞ。」

そういってベアモンはB5のサイズの紙を数枚知己に渡す。

「なんかケーブルみたいなのどっかにないかー?」
「ああ、それなら・・・」

部屋の端っこで壁をたたき、その反射音で何かないか探っているフローラモンが答える。
そして花の手に挟んでいる物を知己に向かって投げる。
知己はそれをキャッチすると、ケーブルとパネルの下にある本体と思われるもの、そして先ほど手に入れたレンズがついた機械をつなぐ。
そして次に、足りないものに気づく。

「電源プラグがねえよぉぉおお!ここにきたときCDプレイヤーは持ってきたが、電池こんなところで使うわけにも行かないしなー・・・あ、そうだ・・・」

知己は気味の悪い笑いをしながら、エレキモンを見る。

「おーい・・・お前、尻尾で静電気を発生、それを強化して電撃にできるよな?」
「ああ!スパークリングサンダーさ!」
「ふーむふむ。」

知己はコードの束のひとつに理科の実験で使うような導線を見つけ、それをレンズの機械の電源ケーブルとつなぎ、エレキモンの尾に挟む。

「何をする気だ・・・?」

条が冷徹な視線で見る。
いくら親友でもやっていいことに限度があるぞ。
そう条の目は語っている。

「大丈夫、ちょっと助けてもらうだけだ。」
「おいおい・・・俺で何しようっていうんだ?」
「簡単なことだ、必殺技を出してくれ。」

エレキモンは尾で電気を発生させる。
通常ならそれを溜め飛ばすのだが、今回はアースとなる電源ケーブルがあるため、そうはならない。

「うし、着いたー!次にこいつを・・・」

次に知己は紙をレンズに当てる。
すると、パネルに紙の内容が映し出される。
当然で字文字表記だ。
だが、知己は以前と同じようにフォントを変え、日本語へ変える。

「エレキモン、もういいぜ。」

眉間にしわを寄せて先ほどから尻尾をこすり合わせているエレキモンに知己が言う。

「疲れたぁ〜。」
「んで・・・これなんだ・・・?」

傍らで見ていた博紀は、まずこれがなんだかわからない。

「なんかのレポート・・・かな?」

どうやらスキャニングした紙の順番が適当だったらしいので、紙に振ってある番号ごとに並べる。

すると内容はこうだった。

wこのせかいのれきしw

3年1組 16番 スカルサタモン

このせかいは、ふるいれきしをもち、とってもとってもひろいせかいですw
ぼくたちは、いまからそのれきしにあたらしいいっぺーじをきざみます♪
このせかいをしはいす

「ああやめだ。読むのがだるくなってきた。」
「大体あいつ平仮名だけしかかけないの?無知なやつね・・・」

条と真希は即平仮名だらけで数秒読んだだけで不快感な思いをする文章を見るのをやめた。
その文章を読んでいる途中だ。
スクリーン上に「転送します」の文字列。
その後データのロード中の表示。

「どうしたんだ、知己。」

そう博紀が聞いたが、知己は”むしろこっちが訊きたいよ”という感情をこめてため息する。

「俺にもわからん。どーやらまた転送機に何か転送されるらしい。」

転送機が動き始める。
データの塊が現れ、それが実体化していく・・・

「え・・・」「まさか・・・」

4人はそれを見て驚愕した。
条と博紀はその度合いを超えて驚いた。

「流美・・・」「博也・・・」

そこにいたのは、小学三年生ほどの少年と少女だった。

         続く。