西暦2004年の春・・・
この年代は、アニメの「デジモン」のブームが去り、大部分の人がデジモンのグッズを売ったりあげたり捨てたりし、
デジモンが世の中から消えていった年であった。
しかし、一部には根強いファンがいた。この物語は、東京都のとある学校での少年二人のふとした会話からこの物語は始まる。

「ああ〜、全く嫌になるぜー・・・」

教室の机に両肘をつけてだらしなさそうにしている少年が言う。

「ん?どうした?何かあったのか?」

健康的な日焼けをしている少年が話しかける。この二人の少年は親友同士。
今問いかけたのが条、そして机にひじを突けて愚痴っているのが条の親友の知己だ。
知己がいう。

「いや、それがよー・・・この前番長軍団(番長軍団とは条たちが住んでいる辺り出回る不良集団。)に絡まれてよ・・・」
「はは、小学生に絡むとはあの集団終わったな。」
「んだなー。吹っ掛けといて小学生に負けるとは・・・本当に末期的ってやつだ。」
「あんな集団よく存在するなぁ・・・ん?ちょっと待て?おまえ今なんていった?」

条は知己の言葉を聞き疑問を持つ。

「だから、あの集団末期的っていたぞー。」
「いや、その前だ。おまえ確か『吹っ掛けといて小学生に負けるとは』っていったよな?」
「言ったがどうしたー?」
「どうしたじゃねえよ!あの集団もとボクサーいるって話だぞ。相手は高校生以上で団体、そしてこっちは小学生で単独、
なのになんでおまえが勝てるんだよ!」
「ん?普通じゃねー?」
「どこが普通だよ!中国人のとある格闘家か?」
「どー見ても一般人だけど何か?」
「こ、こいつって一体・・・」

条はマイペースな親友を目の前に自然にため息が出た

「まー、そういうわけで今度家こいや。」
「どういう訳だ?」
「そう堅いこと言うな。とりあえず今度な・・・」

数日後・・・

ピンポーン

知己の家のインターホンが鳴る。

「はーい。どこ出身の誰ですか?それとご用件をー。」
「東京都出身の山木条です。用件は知己に呼ばれて遊びに来ました。・・・何でそこまで説明する必要がある?」
「お、その見事なつっこみはまさしく条。」

知己が玄関を開けて言う。

「まさしくとかじゃないって!もし今のが俺じゃなかったら言ってくれるか?例えば郵便屋さんがきたら九州出身の博多羅亜面です。お荷物お届けにきましたなんて答えるか普通?」
「そーガビガビ言うなって。とりあえずあがれや。」
「あ、ああ。んじゃあ、お邪魔します。」

条は玄関で靴を脱ぎ、階段を上りながら知己に言う。

「んで?何で今日俺を呼んだんだ?あの言い方は何かあるだろ?」
「お!さすがじゃん。だてに幼稚園からの仲じゃねえな。」
「まあな。だから漫才やっても台本いらずさ。っと、んで、一体何で呼び出したんだ?」
「まー、とりあえず今分かるから焦るなって。」

知己はそういって上り終わった階段の突き当たるにある自分の部屋の扉を開く。
条は知己の部屋を見て言う。

「相変わらずだな、このCDやフロッピーの山・・・」

知己の部屋を見てみれば、PCの周りには記録メディアやPCゲームソフトなどで一杯である。

「汚いように見えて、結構使いやすいんだよ。この方が。」
「ふ〜ん。まあ、人の勝手だからつべこべ言わないが・・・」

知己がPCの電源を入れて話し出す。

「ではさて。お話ししよーかな。今日呼び出したわけを。」
「やっとか・・・で?」
「単刀直入に聞く。おまえデジモン好きだよな?!」
「ああ、好きだけど・・・」
「んでは更に聞くが、いけることならデジタルワールドに言ってみたいようなぁ〜〜!?」
「あ、ああ。そりゃあファンとしての願望そのものだし・・・」
「うし決まり。」
「へ?何を?なんだよ今のあっさり具合。例えるなら不正サイトで会員になるでNO選択したのに勝手に会員登録されたみたいな今のあっさり具合は何だ!?」
「いい例えだ。そう、今のYESの選択でおまえは俺の計画に参加してもらうよ。」
「待て!何で強制的に参加?つかその計画って何!?」
「聞きたいか?聞きたいか?へ、教えてやらね〜よ!!」
「おい!そのジャンプで連載されたとある漫画の主人公の真似をやめろ!!」
「や〜だよ!まずは呼きゅ・・・うぐ!」
「さっさと言え!」
「分かった分かった。だからこの握力任せのアイアンクローを離せ・・・」

条は知己の頭から手を離す。

「・・・実はな・・・最近珍しい物がほしくなったんだ。すなわち珍アイテムってやつかな?そういうのを探しに前に古い雑貨店に行ったんだが・・・そこで面白い物を見つけてな・・・」
「面白い物?なんだ一体・・・」

知己が机から一枚のFDをとりだす。

「これだ・・・」

一見何の変哲もないFDである。

「なんだそれ?ただ単に雑貨店で中古で安かったFDを買えたことを話したかったなんて事ないよな?」
「もっちろん。それよりもっとおまえが驚く物だと思うぞ・・・」
「ん〜・・・ますますわかんね〜・・・」
「ずばり言うぞ。これにはデジタルワールドへ行くためのワーププログラムデータが入っている。」
「はいいぃぃぃぃぃぃっっ!?」

条は思わず驚いた。いや、驚かない方がおかしいだろう。

「ちょっと待て・・・つまり・・・おまえはそのためにそのFDを買ったのか?」
「まあな。」
「まあなじゃねえよ!おまえ頭いかれたんですか?一応聞くが、それいくらした?」
「679円(税込)。雑貨店のばあさんが『お前が一番望んでいる、新たな世界への扉が開く。友人を3人連れて旅立つがよい』とか何とかいってたし・・・まちがいないだろ。」
「ありすぎ!むしろ疑い今ので濃くなった!何だよそのばあさん!まちがいなく裁判所で裁けるよ!」
「落ち付けって。あとの二人がもうすぐ来るしよ。」
「後二人?そういえば『友人3人』っていってたよな?おい!誰呼んだ?おい!」

ピンポーン
インターホンが家中に鳴り響く。

「お、来たか・・・」
「俺し〜らね・・・」

知己が階段を下りていく。

「開いてるぞ・・・」

知己の言葉を聞き、扉の奥にいる少年は扉をあける。

「うぃっす。一体どうした?わざわざ呼び出すとは・・・」

体格のよい少年がいった。
そして、

「珍しいはね・・・私も呼び出すなんて・・・」

そして少年の横に知己よりやや背の小さい少女が立っている。
この二人は博紀と真希。

「よく来た。とにかくあがれや・・・」

知己の部屋・・・

「・・・まあ、よう。」

条がとりあえず二人に声をかける。

「お、条も来てたのか・・・」
「珍しいわね。こうして共通点なさそうな4人がそろう事って・・・」
「いいや。俺たち4人にはしっかりとした共通点があるんだ・・・」

突然言葉を発したのは知己。
博紀が言う。

「共通点?性別が男って言うなら真希は女だし・・・」

知己が言う。

「つまりだな・・・これからは色々と苦労をする。そこで、デジモンにあう夢を見て、なおかつ体力が普通の人よりも優れていること。」

横目で真希を見る条。
そういえば、運動会でも女性の中で秀でていたっけ・・・

「へ〜、真希って運動得意だったんだ・・・」
「・・・苦手じゃないわね。確かに。」

条の言葉に真希が返す。
博紀が言う。

「んで?共通点があるのは分かったが、何故呼び出した?その説明をこちらは聞いてないぜ・・・」
「一言で言うと夢を叶える、ってことかな。」
「どういう事だ?」
「つまりー・・・デジタルワールドで行く・・・」
「はぃぃぃぃ??!?」

真希と博紀が同時に言葉を出す。

「やれやれ・・・やっぱこうなる訳ね・・・」

条があきれた声で言う。
そして知己は・・・

「というわけで、とりあえず俺は必要な食料その他色々持ってくるから待ってろ。」

気楽に事を進めている。
もちろん他の3人は・・・

「はぁ・・・これからどうなるんだか・・・」
「絶対間違っている!100%!」
「ま、とりあえずいける保証はないし、落ち着きましょう・・・」

5分後・・・

「よーし!持ってきたぞー。」

知己が両手に色々な物を抱えている。

「なあ・・・お前とは古い仲だが、これ程までお前の考えが分からない事はなかったと思うよ、俺。」
「なんつ〜か、それ必要?」
「まるで遠足気分ね・・・」

知己が両手に抱えているのは、ポテトチップス、チョコレート、片焼き煎餅、乾パン、爽健美茶ペットボトル2リットル×2、デジモン大図鑑、某漫画、CDウォークマン、CD×5、スピーカー1式、ヘッドホンなど、必要なのか必要じゃないかどうかはっきり断定しにくい物ばかりであった。

「まず、食料は腹が減ったときに食うからまだいいとしよう。でも、CDウォークマンとCD5枚は何で?」
「そのまえに、何故某漫画を一冊だけ持っていく?必要ないだろ・・・」
「それに何で非常食の乾パン以外は全部お菓子なのよ・・・」
 
苦情炸裂といったところであろうか。しかし知己はそんな事物ともせず、

「某漫画は退屈しのぎのため、CDは気分転換のため、デジモン大図鑑はあっちに行ってもどんなデジモンかがすぐ分かり、弱点を調べるため・・・んで、その他はおまけ。」
「ちょっと待て!それじゃあ菓子もおまけか!?お前さっき必要な『食料』その他色々持ってくるっていってたが、なんでその食料がおまけなんだよ!おかしいだろ・・・」

条がたまらず突っ込む。

「まあ、そういうな。これで準備は完璧。」
「勝手にパーフェクトにするなぁ!!ったくっ!」

条が激怒して知己の胸倉へ突っ込もうとした、その時であった。

「まあ、いいじゃねぇか。」

落ち着いた声。その声を発したのは博紀。

「おい、冷静になって考え・・・」

条の言葉を遮って博紀が口を開く。

「冷静になるのはお前だと思うぞ。こういうときはな、契約を結べばいい。」
「契約?なんだそれ?」
「一体どういう展開になるんだか・・・」

博紀の行ってることが、条と真希にはよく理解できてないらしい。

「つまりだな・・・ギャンブルに近い形になるが、知己の言うとおり、もしデジタルワールドへいけたら文句なし。しかし、もし行けなかったら、知己だけ行って(逝って)もらう。これなら特に問題ない・・・」
「なるほどね・・・」
「さっすが博紀!」

博紀の案は即採用。
そして知己は・・・

(ああ。嫌な予感・・・)

10分後・・・

「うし。準備完了だ・・・」
「たいした自信だな。ま、とりあえず『緩やかかつ恐ろしく、お花畑が見える川』を渡ってもらう。」
「三途の川ね・・・」
「ああ、何かすんごいことになってる気がするよ、俺・・・」

知己はそういいながらも結構自信満々。

「んじゃあみんな、OK?」
「お前を川に渡らせる準備はOK」

博紀がグローブを装着しながら言う。

「と、とりあえず、行くぞ!」

動揺しながら知己がファイルをクリックする。
その瞬間!!
ディスプレイから激しい光が放たれる。
そして子供たちは吸い込まれるように姿を消していった・・・・

「う・・・ぅうう・・・」

条が目を覚ます。
そしてそこで見た光景は・・・

「ここ・・・どこだ・・・?」

一面の草原。
見たこともない景色。
果たしてここは・・・

             続く